VMN セミナー情報
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開催日: 2010年11月7日(日) |
腫瘍学セミナー
乳腺腫瘍、乳腺腫瘍手術解説映像、肥満細胞の腫瘍
講師
オンデマンド
Vol.1 乳腺腫瘍 1
- 腫瘍科
- 腫瘍科
●犬の乳腺腫瘍の発生状況
雌犬の最も良く発生する腫瘍。100,000頭に198.8頭の率で発生。雌の犬における全腫瘍の52%が乳腺の腫瘍である。発生のみられる中間年齢は10〜11歳である。
●犬の乳腺の発生とホルモンの関係
完全にホルモン依存性があることが分かっている。
最初の発情が来る前に卵巣子宮摘出術を実施した雌犬には乳腺の腫瘍の発生は限りなくゼロに近い(0.05%)
1度目の発情後に卵巣子宮摘出術を実施した場合には、腫瘍発生の危険率は8%。
2度目の発情後に子宮摘出術を実施した場合には、、腫瘍発生の危険率は26%まで上昇する。
初期の段階で卵巣子宮摘出術を行えば腫瘍の発生率が行わない場合よりも低下することは明白であるが、この効果が有効な時期は生後2.5歳までと報告されている。
●猫の乳腺の概要
雌猫の100,000頭に25頭の率で発生が見られる。この腫瘍の平均発生年齢は10〜14歳である。年齢の初期段階での卵巣子宮摘出術は腫瘍の発生に影響すると考えられているが明確な報告はない。
●犬の乳腺の解剖
犬においては通常片側5個の乳腺が存在する。頭側から第1乳腺と呼び最後が第5乳腺となる。血管の供給は第1乳腺が独立しているが、第2と3そして第4と5は共有している場合が多い。リンパ管の配置は第1単独で腋窩リンパ節そして第2と3は連絡があり腋窩リンパ節に排出している。第4と5はお互い連絡し合い鼠径リンパ節に排出している。
●猫の乳腺の解剖
猫においては通常片側4個の乳腺が存在する。頭側から第1乳腺と呼び最後が第4乳腺となる。血管の供給は第1乳腺と第2乳腺そして第3乳腺と第4乳腺は共有している場合が多い。リンパ管の配置は第1単独で腋窩リンパ節に排出している。第4は鼠径リンパ節に排出している。
Vol.2 乳腺腫瘍 2
- 腫瘍科
- 腫瘍科
●乳腺腫瘍の病理組織検査の目的
腫瘍の組織学的診断名の決定
腫瘍の場合
良性腫瘍。悪性腫瘍
非腫瘍性の場合
炎症性病変。非炎症性病変
●乳腺腫瘍の病理組織検査
良性腫瘍
乳腺種。化性(骨/軟骨)を伴う乳腺種
悪性腫瘍
乳腺癌。悪性混合腫瘍(上皮系腫瘍+間葉系腫瘍)。間葉系腫瘍
●乳腺腫瘍の臨床病理組織検査
腫瘍診断
良性 VS 悪性
腫瘍のマージンの検査
完全切除の有無。周囲脈管への浸潤の有無。
リンパ節検査
付属リンパ節への転移の有無。
Vol.3 乳腺腫瘍 3
- 腫瘍科
- 腫瘍科
●ステージング Vet Pathol. 20:127-142(1983)
ステージ0:間質への浸潤のない管内/小管内の悪性の上皮細胞の増殖。(外科手術2年後の再発率25%)
ステージ1:血管/リンパ管への浸潤のない局所構造へ限られた癌の浸潤。(外科手術2年後の再発率72%)
ステージ2:血管/リンパ管への浸潤あすあるいは付属リンパ節への転移。(外科手術2年後の再発率95%)
ステージ3:遠隔転移
●犬の乳腺腫瘍の予後判定
WHO TMN分類
<3cm
3-5cm
>5cm
※犬の場合、サイズではあまり大きな違いはない。リンパ節転移の有無が重要。
●猫の乳腺腫瘍の予後判定
WHO TMN分類
<2cm(0-8cm3)
2-3cm(9-27cm3)
>3cm(>=27cm3)
※猫の場合、サイズで3cmを越えた場合、明らかに予後が悪い。猫の乳腺の腫瘍は早期に切除すべきである。また猫の乳腺の腫瘍はサイズに関係なく片側全摘すべきである。
※猫の乳腺腫瘍で肺に転移が見られれば予後は60日以内と考えられる。
●予後因子
腫瘍サイズ
猫の乳腺癌100例を用いた報告(JAVMA, vol., 1984)
中央生存期間:2cm以下=4.5年、2-3cm=2年、3cm以上=6ヶ月
猫の乳腺癌53例を用いた報告(J.Vet.Med. Sci., 1996)
中央生存期間:3cm以下=9ヶ月、直径3cm以上=5ヶ月
手術方法(根治的乳腺摘出術 VS 部分切除)
再発の抑制効果はあり、生存期間に差はなし
組織グレード(核の分化程度)
核の分化程度が高いものは生存期間が長い)
増殖関連マーカー
PCNA、Ki-67、AgNORなどの有用性(Res. Vet. Sci. 1998)
●リンパ管内浸潤による予後判定(株式会社ヒストベット調べ:1994-1999)
リンパ管浸潤なし 1年生存率66% 2年生存率33% (中央生存期間18ヶ月)
リンパ管浸潤なし 1年生存率28% 2年生存率 0% (中央生存期間7ヶ月)
Vol.4 乳腺腫瘍 4
- 腫瘍科
- 腫瘍科
●炎症性乳癌
※犬種はあまり関係ないと思われる。
●炎症性乳癌発生状況
発生年齢(56例:7例不明)
中央値;12歳(範囲5〜17歳)
10歳以上:48例(76.2%)
性別
未避妊雌:47例(74.6%)
避妊雌:12例(19.0%)
不明:6.3%
●犬の炎症性乳癌病変の増大時間(病変に変化が認められ周囲に拡大していく時)
1週間以内=9例(14.3%)。1〜2週間=6例(9.5%)。2〜4週間=12例(19.0%)。4〜8週間=5例(7.9%)。8週間以上=13例(20.6%)。不明・無回答=18例(28.6%)
●飼主が乳腺付近の病変の存在に気づいた時点が動物病院の初診からどの程度前か?
1週間以内=6例(9.5%)。1〜2週間=6例(9.5%)。2〜4週間=12例(19.0%)。4〜8週間=7例(11.1%)。8週間以上=24例(38.1%)。不明・無回答=8例(12.7%)
●犬の炎症性乳癌の罹患乳腺と病変の広がり(複数回答)
右側
腋窩皮膚:5例、胸部皮膚1例、第1乳腺:13例、第2乳腺:15例、第3乳腺:29例、第4乳腺:39例、第5乳腺:41例、内股皮膚23例
左側
腋窩皮膚:8例、胸部皮膚0例、第1乳腺:16例、第2乳腺:19例、第3乳腺:21例、第4乳腺:33例、第5乳腺:36例、内股皮膚12例
●炎症性乳癌の初診時からの生存期間
1週間以内=6例(9.5%)、1〜4週間=14例(2.2%)、4〜12週間=26例(41.3%)、12週間以上=16例(25.4%)、不明・無回答=1例(1.6%)
初診時から12週間で 46例/63例(73.0%)死亡
Vol.5 乳腺腫瘍 5
- 腫瘍科
- 腫瘍科
●悪性上皮系乳腺腫瘍の発生した犬における避妊手術そして避妊手術の時期が生存期間に与える影響
雌の犬における乳腺腫瘍は最も一般的な腫瘍である、若齢期の卵巣腫瘍切除術は、腫瘍発生の危険性を軽減するが乳腺腫瘍の犬に対する卵巣腫瘍切除術は生存期間には改善が見られないというのが今までの報告である。
乳腺腺癌に罹患した犬の60%にエストロジェン受容体が存在することが知られている。このことから外科手術が不可能な症例に対してホルモン療法(Tamoxifen)が有効なことがある。
このような事例は、犬の乳腺腫瘍において外科的な切除手術に加えて避妊手術を実施することによって何らかの影響があることが示唆される。
この研究の目的は、犬の乳腺腫瘍切除手術に関して未避妊と避妊症例において生存率に差が存在するか、そして卵巣子宮切除術の時期が生存率に影響するかを判定することができる。 ●悪上皮系乳腺腫瘍の発生した犬における避妊手術そして避妊手術の時期が生存期間に与える影響
成績
未避妊手術症例に対して腫瘍の切除後に卵巣子宮切除術を実施した場合にはどの時期でもINTACT群に比較して長期間生存した。
卵巣腫瘍切除術を乳腺腫瘍切除術後できるだけ早期に実施したほうが生存期間に影響があることが分かった。
腫瘍の種類は生存期間そして避妊手術の時期に影響を与えない。
考察
乳腺腫瘍が発生するまで未避妊状態の症例では、エストロジェン陽性腫瘍である可能性がある。このような状態では避妊手術が生存に有効である可能性がある。
Vol.6 乳腺腫瘍手術解説映像
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Vol.7 肥満細胞の腫瘍 1
- 腫瘍科
- 腫瘍科
●肥満細胞の腫瘍(猫)
全ての皮膚腫瘍の7.6%。発生年齢:4歳以下。多発性。かゆみの程度は様々。
肉眼的所見:輪郭は明瞭、硬い紫色、直径数ミリ〜センチ、大型では局所に潰瘍
細胞診所見:染色はギムザ、細胞質の輪郭は不明瞭、細胞質内に中程度から大量の好塩基性顆粒
組織病理所見:分化型:正常な肥満細胞、未分化型:大小不同、細胞質内顆粒の減少、核分裂像の存在
外科的に切除した腫瘍のマージン検査
マージン内への腫瘍細胞の浸潤の有無
有り:再手術による広範囲の切除
無し:経過観察
※肥満細胞の腫瘍の外科的切除のマージンは2〜3cm。 ●治療
外科的な腫瘍の完全切除
効果的な化学療法はない ●予後
外科的に切除した部分での再発:0〜4%
原発巣以外の部分への再発:7〜35%
遠隔部位への再発:0〜7%
※猫で末梢に肥満細胞が大量に出現してる場合は脾臓摘出術。予後は臨床症状の悪性度による。
Vol.8 肥満細胞の腫瘍 2
- 腫瘍科
- 腫瘍科
●肥満細胞の腫瘍(犬)
組織病理所見
グレード分け:G1=分化が高い(予後良好)、G2=中間(予後要注意)、G3=分化が低い(未分化:予後不良) ●予後
外科的マージンに腫瘍細胞が浸潤している場合は必ず再発
組織学的なグレードと予後の関係<マージンクリアー>(観察期間1500日)
G1:症例数30=生存率83%
G2:症例数36=生存率44%
G1:症例数17=生存率6%
※はじめの6ヶ月が最も再発率が高いので毎月チェックする。 ●犬の皮膚肥満細胞の腫瘍に対する放射線治療
グレード2
術後細胞に腫瘍細胞は見られる
局所リンパ節に転移していない
放射線54Gyを照射
5年間観察
1年後の腫瘍の浸潤や再発の抑制率:94%
2、3、4そして5年での腫瘍の浸潤や再発の抑制率:86%
生存率
1年100%そして5年生存率は96%
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