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開催日: 2014年4月7日(月) |
神経学セミナー 2014
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疼痛性脊髄疾患 Vol.1
- 脳神経科
- 脳神経科
●疼痛性脊髄疾患●症例;10ヶ月齢、雌のブルテリア-Tuffy
頸部痛●10項目プランの概要
1.主訴と病歴
2.患者の評価 / 安定化
3.神経学的検査
4.病変の位置決め
5.重症度>>予後の評価
6.鑑別診断の考慮
7.鎮痛剤の投与
8.診断検査
9.治療計画
10.支持治療
疼痛性脊髄疾患 Vol.2
- 脳神経科
- 脳神経科
●脊髄疾患の鑑別診断
VITAMIN-D
脊髄の疾患を起こすのは、血管、炎症、外傷、奇形、腫瘍、変性性だが、全てに痛みがあるわけではない。●疼痛疾患 Vs. 非疼痛疾患
疼痛性:椎間板脱出(I型)、椎間板脊椎炎、髄外腫瘍、髄膜炎、外傷
非疼痛性:変性性ミエロパシー、髄内腫瘍?、椎間板突出 (II型)?、虚血性ミエロパシー (FCE)?、脊髄嚢胞
/ 脊髄空洞症? ●椎間板疾患●ハンセン分類
2つのカテゴリーに分けられる●ハンセン分類システムI型
軟骨異栄養性犬種に見られる。
6ヶ月例で始まり、1歳までに椎間板の75%が罹患する。
2歳までに椎間板の90%が変性する。●ハンセンII型
大型犬に見られる。
変性は非常にゆっくりと始まり、より高齢で発症する。●急性椎間板ヘルニア髄核の脱出
大型の犬で起こりやすい。
脊髄は脱出するが圧迫は起こらない。
外科適用ではない。
疼痛性脊髄疾患 Vol.3
- 脳神経科
- 脳神経科
●グレーディングスキーム
グレードI:疼痛
グレードⅡ:歩行可能な不全対麻痺
グレードⅢ:歩行不能な不全対麻痺
グレードⅣ:対麻痺
グレードⅤ:対麻痺, 深部痛覚の喪失
動画あり●予後:保存的管理●予後:外科的管理●良好な回復
自立歩行が可能、痛みがない、自律排尿および排便●再発
25%内科的治療で全く再発しない
25%1年後に再発
25%2年後に再発
25%24〜72時間以内に進行手術が必要●治療 – 手術が必要なのは?
麻痺のある患者、再発した患者、難治性疼痛、悪化している患者
疼痛性脊髄疾患 Vol.4
- 脳神経科
- 脳神経科
●CNSの炎症性疾患における鑑別診断
神経組織の炎症を犬の場合は10頭中2頭は感染性、残りはNUE(病因不明の髄膜脳脊髄炎)、猫は10頭中10頭は感染性。猫で免疫介在性は稀。●炎症 – 椎間板脊椎炎
脊柱に炎症を起こす最も多い原因は椎間板脊椎炎で、80%は細菌性。
骨性炎症はX線画像でのみ認められる。但し、2週間ほどしないとX線所見として現れないこともある。
治療は内科的。原因菌の80%はブドウ球菌。強化アモキシシリン / TMS / セファレキシン / エンロフロキサシンで最低6〜8週間以上治療する。
疼痛緩和が必要 – NSAIDsあるいはオピオイド。
細菌性の場合、予後は良好。●MRI所見
疼痛性脊髄疾患 Vol.5
- 脳神経科
- 脳神経科
●感染性髄膜炎
原因としては免疫介在性よりは少ない。
脊椎の痛みに加え、時には全身性の症状を現すこともある。
サルファ剤 15mg/kg bid / クリンダマイシン 10 mg/kg bid vs. ドキシサイクリン vs. メトロニダゾールによる治療●原因不明の髄膜炎
免疫抑制量のステロイド
シトシン 50 mg/m2 q12h SC x 4 回 3週間毎 vs. アザチオプリン vs. シクロスポリン●SWF – 治療できるものを治療すること
抗生剤 + 抗炎症量のステロイド。治療に効果が見られれば抗生剤は4週間使用する。あまり効果がなく時間が許せば抗生剤を変える。
免疫介在性ということであれば、免疫抑制量のステロイドを使用する。効果があれば2〜3ヶ月かけて使用量を低下させる。効果が無ければ2番目の薬剤をプラスする。
疼痛性脊髄疾患 Vol.6
- 脳神経科
- 脳神経科
●脊髄腫瘍
- 椎体腫瘍 – 硬膜外
- 骨肉腫、線維肉腫、血管肉腫、リンパ腫 / 多発性骨髄腫、転移性
- 硬膜内(稀)
- リンパ腫、神経鞘腫瘍、髄膜腫
- 脊髄内(さらに稀)
- 脊髄 (グリア腫瘍)
昔は脊髄造影。現在はCT / 脊髄造影や最善はMRI●骨肉腫および線維肉腫
犬ではあまり予後はよくない。平均4ヶ月●犬の髄内髄膜腫
ボクサーとG.レトリバーの割合が高い
外科手術による平均生存期間は19ヵ月
外科手術+放射線 – 4-78ヵ月●Tuffy….2週間後…
動画あり
疼痛性脊髄疾患 Vol.7
- 脳神経科
- 脳神経科
●質疑応答
非疼痛性脊髄疾患 Vol.1
- 脳神経科
- 脳神経科
●イントロダクション
非疼痛性脊髄疾患で考慮すべき重要な点…血管性、炎症性、奇形、腫瘍性●虚血性ミエロパシー
すべての終動脈血流系
椎間板はどのようにして脊髄に入ってしまうのか? 厳密には不明?
犬、猫、馬、豚、七面鳥、牛、猿に認められる
非疼痛性脊髄疾患 Vol.2
- 脳神経科
- 脳神経科
●犬の虚血性ミエロパシー
超大型犬種48%(ウルフハウンドやマスティフ) / 小型犬種6%、74%が25Kgを超える
ミニチュア・シュナウザーに多い
雄 2.5:1 雌
平均年齢4.5歳
80%が外傷/運動と関連
60%が初期に疼痛を伴う
100%が24時間以内に最大となる。進行はしない。
L4-S3 = 43-50%
85%が非対称性である
12%が痛覚喪失する(予後に大きく影響する)●診断 – MRI
臨床症状から大体の診断をする。
一番有効な検査はMRI。
限局性、境界は比較的明瞭、髄内病変、主にGM、高信号病変、最初の48時間は正常なことがある。
MRIは椎間板疾患の除外に有用である。●転帰
臨床症状とMRI所見は対応する。
84%が2週間以内に歩行可能まで回復する。
自力歩行できるまでの期間中央値=6日
最大回復までの期間中央値=3.7ヶ月
正常なMRIの100%/2椎体長の病変=不良●急性四肢不全麻痺…第1日
※動画は最後のVol.15質疑応答等で再生されています。●2週間後…
※動画は最後のVol.15質疑応答等で再生されています。
非疼痛性脊髄疾患 Vol.3
- 脳神経科
- 脳神経科
●猫の虚血性ミエロパシー
大半が7-12歳
多くがC1-T2部位
2-6週間で回復する可能性がある
回復する可能性はある。●変性性ミエロパシー
変性性=進行性
原因不明の障害に対する非特異的な説明●犬の変性性ミエロパシー
ジャーマン・シェパードに多く見られる。
発症年齢8歳 から14歳、平均9歳
罹患期間6ヶ月から3年
遅発性疾患、後肢における非疼痛性進行性筋力低下
ボクサー、チェサピーク・ベイレトリバー、ウェルシュ・コーギー、ローデシアンリッジバックなど。他の純血種にも発生する。
非疼痛性脊髄疾患 Vol.4
- 脳神経科
- 脳神経科
●臨床所見
非対称性のUMN不全麻痺および四肢の運動失調。
歩行不能な不全対麻痺および対麻痺。
LMN対麻痺。前肢の筋力低下。弛緩性のLMN四肢不全麻痺 / 麻痺●初期の臨床症状
動画あり●典型的な進行
動画あり●神経解剖学的な位置●進行期間
1.UMN不全対麻痺および GP運動失調
2.LMN不全対麻痺から対麻痺
3.LMN対麻痺から前肢の筋力低下
4.LMN四肢麻痺および脳幹症状
非疼痛性脊髄疾患 Vol.5
- 脳神経科
- 脳神経科
●DMに類似する疾患
ハンセンⅡ型椎間板疾患、変性性腰仙部狭窄症、脊髄腫瘍、脊髄嚢胞、骨性圧迫病変、尾側頚髄、整形外科的疾患●診断検査
単純X線検査、脊髄造影検査、コンピュータ断層撮影法、MRI、CSF分析、病理検査●硬化性ミエロパシー●DMは遺伝するのか?●検査所見の意義
SOD1 突然変異は、DMの主要危険因子である。
突然変異したコピーが2個:DMの危険性は高いが、DMを発症するとは限らない。
突然変異したコピーが0個または1個:DMの危険性は低い。●遺伝型の概要
A / A:危険性あり。発症する危険性がある。突然変異対立遺伝子を伝達する。
A / G:キャリアー。発症する可能性は低い。50%の確率で突然変異対立遺伝子を伝達する。
G / G:正常。発症する可能性はほとんどない。"正常で保護的な"対立遺伝子を伝達する。●16を超える犬種でDMが確定されている●治療 / 予後
- 内科的治療
- 有効性が証明されている薬物療法はない
アミノカプロン酸、N-アセチルシステイン、ビタミンE、B12
予後:長期的には不良である。●管理された毎日の理学療法は、変性性ミエロパシーが疑われる犬の生存期間を延長する
療法を受けなかった犬 – 平均55日の生存
中程度の療法 – 平均130 日の生存
集中的な療法 – より長く生存した(平均 = 255 日、P<0.05)
非疼痛性脊髄疾患 Vol.6
- 脳神経科
- 脳神経科
●脊髄空洞症(水脊髄)症(SM)
脊髄空洞症 - CSF流路の閉塞によって脊髄内に液体の充満した空腔(空洞または嚢胞)が生じる疾患。●脊髄空洞症 – なぜ起こるのか?
外傷性、炎症性、先天性、閉塞性 – 椎間板 / 腫瘍、キアリ様奇形に関連●キアリ様奇形(CM)●正常な頭蓋骨 / 小脳とは?●CSF流への影響
動画あり
非疼痛性脊髄疾患 Vol.7
- 脳神経科
- 脳神経科
●SMの臨床症状
特にキャバリアに多発する傾向がある。
引っ掻き動作、脊柱側弯、疼痛、運動失調、不全麻痺
すべてのSMの犬に臨床症状が現れるわけではない(〜 1/3)
- 空洞の幅および位置によって異なる
- 幅広い空洞 = 疼痛 +/- 引っ掻き動作
- SMの犬の多くは無症状または軽微な症状である
- "待つことによる問題は"???
- SMの子犬が生まれる可能性
- SMによる疼痛のある子犬が生まれる可能性
動画あり●内科療法
フロセミド 1-2 mg/kg 1日2回で開始 する
不十分であればプレドニゾロンを 0.5-1.0 mg/kg /日で追加する
不十分であればガバペンチンを追加する
不十分であれば外科手術を再検討する
更に、プレガバリン、アマンタジン、針治療●外科的治療法
大後頭孔減圧術
C1 椎弓切除術
硬膜切除術
問題点は合併症率と瘢痕形成である
内科的管理が奏功しなかった患者を対象とする
外科的な成功率は50〜70%。●まとめ
非疼痛性脊髄疾患は急性または慢性の場合がある
一部は治療可能だが、どの症例も予後は警戒を要する
非疼痛性脊髄疾患 Vol.8
- 脳神経科
- 脳神経科
●質疑応答他
若齢の犬猫における神経学的疾患 Vol.1
- 脳神経科
- 脳神経科
●イントロダクション
若齢の場合は奇形、代謝性、変性性を主に考える。
先天性病変には遺伝性と後天性がある。
遺伝性の場合、品種関連性 / 複数が罹患することが多い。
病変は脳、脊髄、頭蓋および(または)脊椎に発生する。
静的または進行性(変性性)である。
生後数ヶ月で発現する場合と、遅発性の場合がある。●水頭症
先天性 対 後天性
ほとんどが先天性
後天性:閉塞、吸収不良、産生増加●先天性水頭症
トイ種、短頭種に好発。6から12ヶ月で発現。
進行の程度は様々。
臨床症状は、体型が小型、学習の低下、大きいドーム型の頭部、泉門の開存、腹外側斜視などが見られる。
若齢の犬猫における神経学的疾患 Vol.2
- 脳神経科
- 脳神経科
●先天性水頭症
動画あり●腹外側斜視
動画あり●先天性水頭症の診断
臨床症状、X線検査、超音波(泉門が開存している必要がある)、CT / MRI(確定的な診断が行える)
動画あり●先天性水頭症の治療・予後
- 内科的:
- CSFの産生を低減する
- プレドニゾン
- 利尿剤 - フロセミド
- アセタゾラミド
- オメプラゾール
- 抗痙攣薬
- 外科的:
- 外科的シャント術:成功率は70%ほど
若齢の犬猫における神経学的疾患 Vol.3
- 脳神経科
- 脳神経科
●キアリ様奇形と脊髄空洞症
先天性の奇形で多くの小型犬やトイ種に見られる。
臨床症状のないものもあるが、多くが脊髄空洞症(疼痛、脱力などの臨床症状を示す)を起こす。●環軸亜脱臼
トイ種 / 若齢 / 成犬で認められることもある。
94%に歩様異常 - 非対称性の場合がある。四肢麻痺は稀。10%に四肢麻痺
60%に頸部痛。
56%に姿勢反応の異常。
+ 斜頚/頭蓋内症状●原因因子
24%は正常な歯突起である。
46%は歯突起の低形成または無形成がある。
歯突起の屈曲/骨折、横靱帯の欠失、環椎の骨化不全、塊状椎●環椎亜脱臼のX線検査●環椎亜脱臼の透視検査
動画あり●環椎亜脱臼のCT検査●環軸亜脱臼のMRI検査●環軸亜脱臼 - 内科的治療
年齢によっては唯一の選択肢となる場合がある
疼痛緩和
6-8週間の厳格な安静
外固定は成功率38%。再発が多い。骨性の癒合ではない。症状が発現してから30日以内であるほうが良い。●環軸亜脱臼 - 外科的治療
背側および腹側固定術
それでも外固定は必要か?
成功率47-92%
2歳未満で、症状が発現してから10ヶ月以内であるほうが良い。
骨性癒合が起こるまで6週間安静にする
- 合併症:
- アライメント不良
若齢の犬猫における神経学的疾患 Vol.4
- 脳神経科
- 脳神経科
●肝性脳症
波がある。潜行性に進行する慢性経過を取る。左右対称性の症状。全身症状(体重減少、食欲不振、嘔吐下痢等)が一般的。
動画あり。●発生機序
門脈体循環シャント、毒素の濾過低下●診断
血液検査、尿酸血症の確認。安静時アンモニア濃度、食前食後の胆汁酸検査、画像診断
CSF穿刺、CT / MRIの必要はない。●内科的治療
タンパク質制限食による内科的治療の主な目標はアンモニアの低減。
細菌を減少させるために、ネオマイシン、メトロニダゾール、アンピシリンなどの抗生物質を用いる。
ラクツロースを用い、食渣の通過時間を短縮する。
その他抗けいれん薬。バルビツレート、ペンゾジアゼピンは避ける。その他肝臓で代謝される薬剤も避ける。
若齢の犬猫における神経学的疾患 Vol.5
- 脳神経科
- 脳神経科
●ライソゾーム病●ライソゾーム病概要
異化の遮断、貯蔵物質の蓄積、多様な非特異的臨床症状、小脳が影響を受けることが多い、純血種および雑種の犬猫、生前診断は難しい。●サブグループ・蓄積症・欠損酵素表●シグナルメントおよび病歴
性差は無い、多数の好発品種が認識されている、殆どが未成熟の動物である(-成体で発症する疾患もある(フコシドーシス))、何ヶ月にも及ぶ潜行性および進行性。●臨床症状
- CNS&神経筋
- 小脳 / 前庭性が最も一般的 –
- 振戦、運動失調、測定異常、眼振
- 多くは前脳症状に発展 - 痙攣
- 発作、精神機能の変化
- 一部に末梢性ニューロパチー – (ニーマン・ピック病A型およびグロボイド細胞型白質異栄養症)
- 網膜変性 – ニューロン性セロイドリポフスチン沈着症
- 眼病変 – 白内障、角膜混濁
- 骨格および結合組織の病変 - MPS
動画あり●症例:15ヶ月齢の狆ーGM2 テイ・サックス病の変形
動画あり●症例:在来短毛種猫 – 2歳、ニューロン性セロイドリポフスチン沈着症
動画あり●症例:ボーダー・コリー – 26ヶ月齢、ニューロン性セロイドリポフスチン沈着症
動画あり
若齢の犬猫における神経学的疾患 Vol.6
- 脳神経科
- 脳神経科
●診断 - 疑い
- 臨床病理学
- CBC、生化学 - 著変無し
- 血液塗抹標本 - 白血球中に空胞
- リンパ系 / 肝臓組織の塗抹標本
- 尿 - 酵素および尿中排泄物
- 骨髄穿刺
- X線画像検査
- MPSの骨異常
- CSF分析
- GCL / フコシドーシスでは空胞を持つマクロファージとリンパ球
- 神経バイオプシー
- GCL / フコシドーシス / α-マンノシドーシス
- MRI
- 脱髄 - 白質中のT2高信号 - 瀰漫性で左右対称性
- 灰白質 / 白質比の増加
欠損酵素の特定(ホモ接合体なら0-5%;ヘテロ接合体なら50%)
分析には年齢の合致した コントロールが必要
全血白血球 / 肝臓 / 腎臓 / 線維芽細胞の培養
- 分子遺伝子検査
- 単一遺伝子の欠損、フコシドーシ、GCL
骨髄移植
遺伝子治療
支持的療法
進行は通常、不可避である●若齢動物の小脳疾患
多くは、奇形とウイルス感染●小脳低形成
非進行性、筋力良好、精神機能に変化は無い。運動失調、測定過大、ワイドスペースの姿勢、企図振戦
若齢の犬猫における神経学的疾患 Vol.7
- 脳神経科
- 脳神経科
●質疑応答
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.1
- 脳神経科
- 脳神経科
●神経学的鑑別診断
主に血管、炎症、腫瘍●脳血管疾患
脳血管発作 / "脳卒中"=急性非進行性非対称性●脳血管疾患
血管閉塞(最も多い)ー血栓症、塞栓
血管破裂または漏出●脳血管疾患
血管閉塞ー虚血性脳卒中:血栓によって脳のある領域への血流が遮断される
血管破裂ー出血性脳卒中:脳組織の内部または周囲に出血が起こる●犬の脳血管疾患:
中央年齢8歳 [18ヵ月 – 15歳]だが、どの年齢でも起こりえる。
純血種ならびに雑種
全体として年齢、性別、品種による素因はない
キャバリア・キングチャールズ・スパニエルとグレイハウンドの割合が高い
小脳梗塞の41%に一過性の虚血性発作と思われる病歴がある
再発率は約30%、死亡率は20%●脳血管疾患 原因と分類●領域梗塞
吻側小脳動脈(犬の脳卒中全体の45%)●ラクナ梗塞
吻側脳幹の貫通動脈24%
線条体動脈15%●脳血管疾患:関連疾患 – 梗塞
関連する内科疾患がない 39-45%
慢性腎臓病 3-24%
クッシング 5-18%
敗血症性塞栓 18%
- 甲状腺機能低下性
- アテローム性動脈硬化症 13%
寄生虫 10%
糖尿病 3%
心原性?
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.2
- 脳神経科
- 脳神経科
●脳血管疾患 原因と分類 – 出血
- 原発性 (犬ではまれ?)
- 動脈性高血圧症
- 続発性
- 血管奇形
- 動脈瘤
- 腫瘍 (原発性または転移性)
- 血管炎
- 凝固障害
- 出血性梗塞
病変の位置、大きさ、疾患の持続期間、および虚血性vs.出血性によって決まる
甚急性 / 非進行性 / 側方化
痙攣発作 (16-100%)
反対側の半側空間無視
同側方向に頭部を傾ける / 旋回
反対側の固有受容感覚の欠如、顔面痛覚鈍麻、威嚇反射の喪失●診断と評価
最も優れた検査はMRI
画像検査 – MRI 梗塞
マスエフェクトが正中をまたがないという特徴がある。●MRI拡散強調画像検査
腫瘍などと鑑別することが可能。
従来のMRIよりも早期に脳内出血を診断できる。●脳血管疾患: 虚血に対する治療
1- 基本的な生理学的変数のモニタリングと補正
2- 血栓溶解(3時間以内)
3- 神経細胞死を防ぐための、生化学的および代謝的カスケードの抑制
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.3
- 脳神経科
- 脳神経科
●脳腫瘍:分類
亜急性-慢性進行性非対称性
1. | 神経上皮性 星状膠細胞性、希突起膠細胞性、混合性神経膠腫、上衣細胞性、脈絡膜上皮、神経細胞性、胚芽性 |
2. | 髄膜 – 50% |
3. | 原発性CNSリンパ腫 |
4. | 胚細胞性 |
5. | 転移性 |
犬の脳腫瘍全体の45%、猫の脳腫瘍全体の80%を占める
複数の部位でクモ膜組織から発生する
組織学的パターンは幾つかあるが、予後的意義はない
1/3は壊死性および嚢胞性
緩徐に成長し圧迫性である●脳腫瘍:星状膠細胞腫
犬で2番目に多い脳腫瘍 (17% ) / 平均年齢 8.6 歳 / ボーダーテリアおよび ボクサー (21%) / 性差はない
大半が大脳と間脳(8倍の確率) / 小脳は28%
星状膠細胞腫の変異型として、原線維性、原形質性、毛様細胞性、未分化性、大円形(または肥胖)細胞性が報告されている
顕著な浮腫が一般的である
急速に成長し破壊性である●脳腫瘍:転移性疾患
多くの原発性内臓腫瘍、特に癌はCNSに広がる可能性がある
動物 (17%)はヒト (30%)よりも少ない?
近位部(骨、鼻、耳)または遠位部(前立腺、肺、乳腺)の組織から転移する可能性がある
単発または多発性の病変●脳腫瘍:評価…..シグナルメント
5歳以上の犬が最も多く、中央年齢は9歳。
7歳<の猫 (リンパ腫では、より若齢の猫)
短頭種は膠細胞腫瘍、長頭種は髄膜腫の素因がある
ボクサー、G.レトリバー、ドーベルマン、スコッチテリアの割合が高い
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.4
- 脳神経科
- 脳神経科
●脳腫瘍:診断
CSF穿刺 – 細胞とタンパク質は増加していることもあるが、非特異的所見である
CTスキャン – 頭蓋骨病変と一部の大型脳病変を識別できる
MRI スキャン – 脳病変の画像化に優れている
バイオプシー – 画像ガイド下または手術によって実施できる●脳腫瘍:治療選択肢
保存的 / 緩和的、根治的治療、外科的減容積、放射線療法、化学療法、遺伝子治療、免疫療法●脳腫瘍:治療選択肢
- ステロイド
- 抗炎症量
- 大半の患者が24-72時間で改善するが、画像所見と局所的障害は残る場合がある
- 脳腫瘍の容積を縮小する / ↓CSF
中央生存期間 6-119日●脳腫瘍:治療選択肢 - 外科手術(深部にあるとか神経学的な症状が進んでいる場合は使えないことも多い)
マス・エフェクトの軽減、診断の確定、腫瘍縮小手術
禁忌ー深部の腫瘍、一般状態が悪い、転移がある?
- 外科手術単独の成功率(腫瘍のタイプによる)
- 犬の髄膜腫 中央生存期間 138-230日
- 猫の髄膜腫 中央生存期間 485-830日
正常組織の損傷を最小限に抑えながら
腫瘍を破壊させることが目標である
CNSへの副作用を生じる可能性がある
小線量分割と高い総線量
単独使用による中央生存期間 140-370日
外科手術との併用による中央生存期間 300-1150日
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.5
- 脳神経科
- 脳神経科
●犬猫におけるCNSの炎症性疾患
炎症は感染性または無菌性である
炎症は髄膜炎、脳炎、脊髄炎、またはこれらの併発を引き起こす
髄膜炎はCSFを取り囲む髄膜(軟膜&クモ膜)の炎症と定義される
脳炎(Encephalitis)は脳の炎症 / 脊髄炎(myelitis)は脊髄の炎症●犬の臨床症状(どこで起きているかで様々)
急性から慢性、進行性、非対称性、多巣性、脳神経 / 視覚の障害。精神機能の変化、不全麻痺、痙攣発作、姿勢反応の欠如、頚部痛、発熱●炎症性疾患の鑑別診断
亜急性-慢性, 進行性, 非対称性 +- 疼痛●炎症性疾患の診断
- ミニマム・データベース
- 詳細な病歴 – 旅行 / 接触は?
- 身体検査
- 神経学的検査
- 眼底検査
- 血液学 / 血清生化学検査
- 尿検査
- 胆汁酸
- 胸部および腹部の画像検査
- 感染性疾患の抗体価 / PCR
脊髄または脳疾患のあるすべての患者にとって非常に有益な検査である
麻酔が必要
技術的な熟練が必要
直ちに検査室分析が必要
ヘタスターチや自己血清を添加し4℃で保存する
特異度はほとんど無いが感度は極めて高い
大槽および腰椎からのサンプル採取が望ましい
クオリティは主観的に判断する
細胞数、タンパク値、細胞学的検査、抗体価およびPCR、培養検査、電気泳動
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.6
- 脳神経科
- 脳神経科
CTやMRIはその他の疾患をルールアウトするために用いる。●CTスキャン
骨の描出に優れている
CTでは実質における重大な異常を証明できる
造影剤による増強が役立つ場合がある
後頭蓋窩の画像化には適していない●MRI
軟部組織のディテールが優れている
疾患の範囲を評価できる
非特異的
CSFと比較した感度は76% (Lamb 2005)●CNSの炎症性疾患における鑑別診断
- 感染性 (犬2/10; 猫10/10)
- ウイルス性、細菌性、原虫性、リケッチア性、真菌性
寄生虫性●FIPによる脳脊髄炎
- 病態生理学:
- 猫コロナウイルス、ドライタイプ、CNSの1/3
- 診断:
- 系統的な検査 / CSF / MRI / PCR
- 治療:
- 証明された治療法はない
犬では耳 / 鼻 / 皮膚 / 腹部から感染が波及する可能性がある
過剰な菌体
しばしば発熱と血液学的検査上に変化が認められる
脳 > 脊椎 (蓄膿症)
予後は警戒が必要である●抗生剤療法
アンピシリン、アモキシシリンクラブラン酸(これらははじめの2〜3日のみ)
エンロフロキサシン、第三世代のセファロスポリン系薬剤、メトロニダゾール、トリメトプリム-サルファジアジン、ドキシサイクリン
原因菌が特定できない場合も多いので複数併用療法を行うことが多い。
ステロイド療法?(最初の2〜3日のみ抗炎症用量で用いる)
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.7
- 脳神経科
- 脳神経科
●原虫性脳脊髄炎
Toxoplasma gondii / Neospora caninum / Sarcocystis neurona
全身性疾患で、免疫抑制から続発する。しかし全身性の症状を見ることは稀。神経症状のみが見られることが多い。
抗体価は診断を補助する / CSFのPCRは確定的なのか?
トリメトプリム / スルファジアジン (15mg/kg 12時間毎 PO) +- ピリメタミン (1mg/kg/日 PO)
クリンダマイシン (15mg/kg 12時間毎 PO)●クリプトコッカス性
一般的な真菌性CNS疾患である
眼球、鼻、皮膚への波及もある
CSF分析結果は様々だが、細胞学的検査は必須である
血清またはCSFのクリプトコッカス莢膜抗原の検出
フルコナゾール 5-15 mg/kg PO bid を6カ月間>>イトラコナゾール
アンフォテリシン B SQ 16mg/kg
55% の犬では治療が奏功するが、再発する●肉芽腫性髄膜脳脊髄炎 (GME)
CNSの特発性炎症 (全体の25%)
白質を冒すT細胞介在性の遅延型過敏症
純血種で小型の成犬 (平均55ヵ月齢)に罹患が多い (SWF:白色被毛のフワフワした小型犬)
急性または慢性、局所性またはびまん性
未治療での生存期間は1-2ヵ月●肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)の治療
- ステロイド剤単独
- 犬23頭;生存期間8-41日 Munana K and Luttgen P:JAVMA 1998
- 放射線療法
- 40-49.5Gy;MST = 114日 Munana K and Luttgen P:JAVMA 1998
- プロカルバジン
- 25mg/m2/日 PO – 犬21頭;MST = 420日 Coates J et al:JVIM 2007
- ステロイドおよびシトシンアラビノシド 50mg/m2 SQ x4
- 犬10頭;MST 531日 Zarfoss M, et al:JSAP 2006
- シクロスポリン 10 mg/kg/日 (+/- ステロイド / +/- ケトコナゾール)
- 犬10頭;MST 930日 Adamo PF, et al:JSAP 2007
- アザチオプリン
- 犬40頭;MST = 1,834日 Wong MA et al:JAVMA 2010
- レフルノミド
- 1.5-4mg/kg/日 PO
- ミコフェノール酸
- 10-20mg/kg PO 12時間毎
不明の病因によるその他の髄膜炎 (MUE)
しばしば品種特異的である
発症時の平均年齢は2-4歳
パグ, マルチーズ、 ヨークシャーテリア, チワワ
広範な軟化症を生じる
病因は不明 – 家族性
治療への反応は限定的
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.8
- 脳神経科
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●SWF – 治療可能なものを治療する
まず、時間的に余裕がある軽症例であれば抗生剤 + 抗炎症量のステロイド療法を行う。(3〜5日間)
改善が認められれば、もう3−4週間抗生物質を続ける。
改善が認められなければ、抗生物質を変えるか、免疫抑制量のステロイドを用いる。
免疫抑制量のステロイド4mg/kg/dayを2日間行い。その後2mg/kg/day14日間。その後1mg/kg/day30日間。さらに効果が得られる最少量まで漸減。
それでも効果が得られなければ第2の薬剤を用いる。但しそれも効果がないものもある。●第二の薬剤 – シトシン / シトラビン / AraC
50mg/m2を12時間毎で4回投与する
3週間毎の治療を3回繰り返す
次の3回は4週回毎に延ばす
200mg/m2をCRIで24時間かけて投与する
まれに骨髄抑制を生じる●2番目の薬剤 – シクロスポリン(免疫調整剤)
5 - 10mg/kg PO bid
血清濃度を測定できる
副作用は以下の通り:下痢, 嘔吐, 悪心, 食欲不振、ALKP, ALT, コレステロールの増加, Albの減少、尿路感染症。歯肉の過形成●まとめ
CNS疾患は様々な原因によって生じる
確定診断は非常に難しいことがある
治療は確定診断または治療への反応によって異なり、エビデンスに基づいた情報は極めて少ない!
予後は常に要警戒だが、完全な回復も可能である
高齢の犬猫の脳疾患 Vol.9
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