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VMN セミナー情報

  • 専門医に学ぶ講演会
  • 科目
開催日: 2016年1月27日(水)

麻酔学セミナー 2016

1.神経疾患の麻酔管理
2.胸部外科手術の患者
3.麻酔と疾患

講師

Khursheed Mama, DVM, Diplomate ACVAA
Professor, Veterinary Anesthesiology
Department of Clinical Sciences
Colorado State University
Fort Collins, CO 80523

演題

1.神経疾患の麻酔管理
2.胸部外科手術の患者
3.麻酔と疾患

関連ハンドアウト(参考資料)

  • 麻酔と疾患(ご講演資料)
    ※こちらのハンドアウト資料にはトピック2とトピック3の内容を含みます。

オンデマンド

トピック1 麻酔と疾患 Vol.1
  • 一般外科/麻酔科

・麻酔と疾患
・麻酔管理
 動物は何のために来院するのか?
 →選択的手術(OVH)、その他の問題(運動不耐性、斜頚)、毒物への暴露(レーズン)、別の要因(食後)に影響を受けた症状、等
・シグナルメント/身体検査所見
 →   年齢、品種等
 →   T/P/R、粘膜色、意識状態、水和状態、腹部触診
 →   救急の場合には、食事摂取の状況にも注意する
・検査室検査所見
 →   CBC
  貧血、タンパク質、炎症
 →   血清化学的検査
  BUN、Cr、肝酵素、グルコース
 →   尿検査
  USG、タンパク尿
・新たに診断検査を追加できるか、または追加すべきか?
 →   ECG
  不整脈 – 種類は?
 →   MRI
  脳腫瘍 – 位置と大きさ
 →   超音波画像診断
  胸腔内液体貯留 – 心原性または非心原性
・麻酔管理
 麻酔計画は全ての情報を基にして作成する
 利用可能な薬剤、支持装置とモニター機器、特定の状況(例 MRI)についても考慮する

トピック1 麻酔と疾患 Vol.2
  • 一般外科/麻酔科

・神経疾患の患者
 非常に多様な症状を発現する
  脳、脊髄、末梢神経系
・脳疾患が疑われる動物は、診断検査(例、CT/MRI)、外科的介入、他の治療(放射線)のために来院する
・理解しておく用語
 脳代謝率 (CMR)
  グルコースおよび酸素は、脳機能を支持するために不可欠な基質である
 活動レベル、細胞の要求量、麻酔深度および薬剤、他の影響を受ける
 CMRは、神経の活動レベル、細胞要求、体温、麻酔深度、薬剤だけでなく、疾患にも影響を受ける。
 脳酸素消費量(CMRO2)は、脳の酸素利用率であり、正常な脳では、脳酸素消費量(CMRO2)はCMRと並行する。CMRg(グルコース)も同様である。
 脳に異常(外傷、腫瘍)があると、酸素/グルコースの需要と消費の調節が一致しなくなる可能性がある。脳内盗血
 十分な酸素と必須基質を脳に確実に供給するには、脳灌流圧(CPP)を維持しなければならない。
 他の因子に影響される

トピック1 麻酔と疾患 Vol.3
  • 一般外科/麻酔科

 脳灌流圧(CPP)は平均動脈圧(MAP)とICPに影響を受ける
  CPP = MAP – ICP
 組織還流圧(TPP)を算出する公式の修正
  TPP = MAP – 中心静脈圧(CVP) / 全血管抵抗(TVR)
・脳血流(CBF)
 脳血流(CBF)も重要な用語である。
  頭蓋内の細胞に供給される血液を反映する。
 CRM、O2、CO2、血液粘性、MAP、および麻酔薬の影響をうける。
・神経疾患の患者
 CBF、CMRO2、OEF
・MAPは正常な状況下で厳密に調整されている
・神経疾患の患者
 中枢神経系の血管は、局所におけるpH、CO2、O2の変化に反応し、CBF(つまりICPも)を幅広いMAP(50 – 150 mmHg)内に維持しようとする
 一方、CBF(およびICP)が増加するのは、O2が有意に減少した場合だけである
 25 〜 75 mmHgのCO2は、CBF(およびICP)に劇的な影響を与える可能性がある

トピック1 麻酔と疾患 Vol.4
  • 一般外科/麻酔科

※開始3〜5分あたりに機材の不調から大きな雑音がしばらく入ります。お気をつけください。
・頭蓋内圧(ICP)
 血液、脳脊髄液、脳腫瘤、そして浮腫から生じた細胞外液に影響される
 固定された頭蓋腔では、これらの要素のどれが変化してもICPに影響する
・ICP亢進の症状
 意識障害
 異常な呼吸パターン
 乳頭浮腫
 斜視、後弓反張、瞳孔不同、散瞳/固定瞳孔
 クッシング反射(しばしば遅発性の徴候)
・クッシング反射
 ICP上昇 → BP上昇 → 圧受容体反射 → 徐脈
・ICP亢進の原因
 頭部外傷、頭蓋内腫瘍、水頭症、鼻腔内または頭蓋冠の浸潤性腫瘍、高CO2,麻酔薬、体位、発咳、頸静脈閉鎖など

トピック1 麻酔と疾患 Vol.5
  • 一般外科/麻酔科

・ICP(頭蓋内圧)が高いとヘルニアのリスクが高くなる
・神経疾患の患者
 従って、このような患者の麻酔管理は、頭蓋内圧の亢進を予防または治療することに目標を置く
 そのためには、適切な薬剤の選択と補助治療を行う
・脳の神経損傷を招く因子

トピック1 麻酔と疾患 Vol.6
  • 一般外科/麻酔科

・神経疾患の患者 保護的な周麻酔期管理法:
 体温は正常かやや低めに保つ
 正常血圧を維持する
  エフェドリンを使用しない – 血液脳関門を通過しやすいため
  血管拡張剤の使用は最小限にする – CBFが増加するため
 体液バランスを維持するが、大量の晶質液は再分布によってCNS浮腫の一因となり得るため、投与量は最小限にする
 必要に応じて血液型/クロスマッチ試験を行う
 血糖値をモニターし、高/低血糖を予防する
 正常な酸素化を維持する
 PaCO2は正常から正常範囲の下限で維持する
 頸静脈圧迫、頭を下げた体位、気管挿管時の発咳等を回避する
 適切な薬剤を選択する

トピック1 麻酔と疾患 Vol.7
  • 一般外科/麻酔科

・神経疾患の患者 薬剤の選択
 嘔吐を引き起こす薬剤は使用しない
 麻酔前後は呼吸抑制剤を使用しない (麻酔中は陽圧換気でコントロールする )
 CMRとCBFのカップリングを妨げる薬剤、あるいは心拍出量や血圧を大きく変化させる薬剤は使用しない
・神経疾患の患者 注射薬
 デクスメデトミジンは推奨されない。ケタミンは禁忌(特に1mg/kgを越える高用量)。
 ミダゾラム、ジアゼパム、エトミデート、プロポフォールは許容範囲だか呼吸抑制に注意する。
 オピオイドは嘔吐(皮下投与)、呼吸抑制(高用量のIV)に注意する。
・神経疾患の患者 吸入麻酔薬
 ~ MACに対して、CMR/CBFを低下させる
 その後CBFが増加するとICPも上昇する
 補助薬は吸入麻酔を最小限のMAC以下で維持する
・ハイリスク神経疾患の患者
 ハイリスク患者では、TIVA(完全静脈麻酔)がCBF/CMRのカップリングを維持する
  オピオイドの定速注入 フェンタニル 10 – 20 µg/kg/時
  プロポフォールの定速注入 6 – 24 mg/kg/時
 換気は極めて重要である!!!

トピック1 麻酔と疾患 Vol.8
  • 一般外科/麻酔科

・神経疾患の患者 ICPの上昇に対する治療
 利尿剤の投与
  マンニトール
  フロセミド
 過換気
 場合により、麻酔薬を変更する
・質疑応答

トピック1 麻酔と疾患 Vol.9
  • 一般外科/麻酔科

・症例管理
 4歳 キアリ奇形のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル 外科的緩和のため来院
 画像検査により重大な変化が示された
 犬は沈鬱である
 斜視が認められる
 血液検査は正常
 心雑音が明白である
・麻酔計画の作成 − 前投薬、麻酔導入

トピック1 麻酔と疾患 Vol.10
  • 一般外科/麻酔科

・麻酔計画の作成 − 麻酔維持
 MACが1を越えると脳血流量が一気に上がるので、1を越えないように。
・症例管理
 ICPを上昇させる、またはCMRとCMRO2のカップリングを妨げるような薬剤は使用しない(ケタミン、デクスメデトメジン)
 低換気(正常から正常よりやや低いCO2が理想的)、低酸素、高血糖、高体温を起こさないようにする
 気管内挿管または抜管時に動物を発咳させないようにする
 頚部を圧迫するような保定をしない
 可能であれば頚静脈カテーテル留置は行わず、頭部を心臓と同じ高さに保つ
・クッシング反射が見られたら、どのように治療するか?
 マンニトールを 0.5 – 1.0 g/kgで 15 – 30 分かけて投与
 次に フロセミド 1 – 2 mg/kg
 ステロイドの使用は意見が分かれている (使用する場合はデキサメサゾンが勧められる)

トピック1 麻酔と疾患 Vol.11
  • 一般外科/麻酔科

・抗コリン作用薬の投与は、患者のICP上昇を判断する我々の能力(指標としてクッシング反射を使用する)にどのような影響を与えるのか?
 徐脈が分かりづらくなるので使用しない人もいる。
・空気塞栓のリスクを考慮する
 なぜ起こるのか?
 最小限にするにはどうするのが良いか?
 どのように認識するのか?
 どのように治療するのか?

トピック1 麻酔と疾患 Vol.12
  • 一般外科/麻酔科

・覚醒をどのように管理するか
 一番重要なのは換気。
 頸静脈を圧迫するようなカラーやバンテージはしない。
・この犬の覚醒期にはどの鎮痛剤を投与すると良いか?
 NSADsで十分? 意識障害がなければオピオイドでもいいか?
・覚醒期に動物が痙攣発作を起こしたらどうするか?
 薬剤による管理 /投与量は?
  一番用いられるのはベンゾジアゼピン系(ボーラスでもCRIでもよい)。さらにバルビツレート系を加えても良い。
  ガベペンチン:疼痛の緩和、痙攣発作への対処。
  プロポフォール:挿管が必要に
 その他の選択肢?

トピック1 麻酔と疾患 Vol.13
  • 一般外科/麻酔科

・質疑応答

トピック2 胸部外科手術の患者 Vol.1
  • 一般外科/麻酔科

・胸部外科手術の患者
 臨床像は様々である
  先天性異常(例、PDA)の整復のため来院したが、それ以外は健康で若齢の子犬(または子猫)
  乳び胸や感染性の胸膜滲出がある若齢または高齢の動物
  外傷、気胸、および肺挫傷があるが、それ以外の問題(例、骨折)で手術が必要な動物
・胸部外科手術の患者
 肺葉捻転
 肺葉のブラ、嚢胞
 胸腔内腫瘍 – 胸腺腫、肺原発性腫瘍など
 胸壁の腫瘍が胸腔内に進入した動物
 先天性または外傷由来の横隔膜破裂
 心疾患など
・こうした臨床像を示す患者への注意事項はしばしば共通している
 疼痛および鎮痛
 低血圧症、出血
 不整脈
 低換気
 換気血流不均等
 低酸素血症
・計画を立てる際は、動物特有の問題についても考慮すべきである
 若齢動物の低血糖症
 併発疾患
 嚥下障害、異常な発声
・心臓/呼吸器の検査
 電気生理学的検査、超音波検査、  X線検査、気管支鏡検査、喉頭検査
・どのように管理すればよいか   
 症例を基にしたアプローチによる説明

トピック2 胸部外科手術の患者 Vol.2
  • 一般外科/麻酔科

・症例 2 CALLIE
 10歳 避妊雌 短毛在来種
 24時間前から元気消失、食欲不振、頻呼吸
 体温 39.5度,心拍数204,呼吸数60
 脱水している
 胸部聴診での異常所見
 左側の心音と肺音が聴取されない
・血液検査で判明したこと
 PCV 49%、TP 10.2 g/dL
 WBC数の増加
 BUN 40、Cr 2.2
 グルコース 300 mg/dL
 他の数値は正常範囲内
・評価と安定化
 X線検査、超音波検査
 酸素、輸液療法
 胸腔穿刺
・左側開胸術の決定(異物に続発した胸水が疑われる)

トピック2 胸部外科手術の患者 Vol.3
  • 一般外科/麻酔科

・ディスカッション
 前投薬

トピック2 胸部外科手術の患者 Vol.4
  • 一般外科/麻酔科

・ディスカッション
 導入
・前投薬
 オピオイド±抗コリン作動薬
 選択肢は広い
・導入
 ケタミン+ベンゾジアゼピン
 他の選択肢を検討してもよい
・維持
 バランス麻酔法
  吸入麻酔剤に補助的な薬剤/手技をプラスすることで、疼痛経路の異なる側面に働きかけ、心血管機能を保護する
・疼痛管理
 意義
  全身麻酔は疼痛(知覚)を抑制するが、侵害刺激の存在下では、侵害受容のインプットと侵害経路の活性化は継続している(このインプットに対する調節因子が存在しない場合)
・疼痛の調節
 疼痛の経路
・吸入麻酔
 高用量の吸入麻酔薬は、ホメオスタシス機構に悪影響をおよぼし、有害事象を助長することがある
 許容性の低下している(すなわち病気の)患者ではより起こりやすい
・症例 2
 ヒドロモルフォン
  0.02 – 0.05 mg/kg/時
  処置時の鎮痛
 フェンタニル
  0.1 – 0.3 µg/kg/minute
  処置時の鎮痛およびMACの減少として
 ケタミン
  10 – 20 µg/kg/分
  ワインドアップを防止する

トピック2 胸部外科手術の患者 Vol.5
  • 一般外科/麻酔科

・オピオイド
 猫におけるフェンタニル
  熱閾値への影響
・症例 2
 以下の薬剤を注入することによる長所と短所は何か?
  リドカイン
  デクスメデトミジン
・リドカイン
 猫ではリドカインがイソフルランの用量を低減する
 しかし、心血管系の抑制は同量のイソフルランよりも強い
・デクスメデトミジン
 5μg/kg で負荷投与し、 1μg/kg/分で定速点滴する
 安定した麻酔、良好な鎮痛が得られる
 血圧は安定するが、心拍数は下がる
 第2度房室ブロックの発生率が高い
 心拍出量が減少する
 アチパメゾールを使用して作用を拮抗できる
 ASAⅠとⅡの患者のみに使用することが推奨されている

トピック2 胸部外科手術の患者 Vol.6
  • 一般外科/麻酔科

・症例 2
・支持
 患者の体温が低下していたら体外加温する
 低タンパク血症またはPCVが低下している場合は、静脈内晶質液および膠質液を投与する
 気管内挿管と高いFiO2による換気(調節可)
・換気
 開胸術では以下の理由から換気が必要である
  気道/胸壁の損傷
  胸膜腔の欠如(例、液体)
 PaCO2 = CO2 産生 / 肺胞換気
  正常値 ~ 35- 40 mmHg/麻酔ではこの数値にいくらかの増加を見込んでおく
・基本設定
 適切な初期設定
  8-10 呼吸/分で 10-15 ml/kg
  100 - 150 ml/kg/分のMV
  吸気圧 10 – 15 cm H20 (通常、猫ではこれより低くてもよい)で、吸気時間 は約1秒
 患者を評価する
・好ましくない作用
 心血管系の抑制
  吸気相の静脈環流低下
   SV は陰圧を生む
   CV は陽圧を生む
  PaCO2 が減少すると交感神経緊張が低下する
・心血管系の抑制
  麻酔深度の増加は、心血管機能に悪影響を及ぼす可能性がある
・モニター
 ECG-心拍数と調律
 血圧-直接法を検討する
 体温プローブ
 カプノグラフィーおよびパルスオキシメトリー
 血圧ガス(動脈)、酸塩基、電解質、 グルコース

トピック2 胸部外科手術の患者 Vol.7
  • 一般外科/麻酔科

・症例 2
 必要に応じて行う治療
  抗不整脈薬(どの薬剤を使用するか):リドカインは猫に毒性があるので禁忌。エスモロール推奨。なければ低用量のリドカインを用いるしかないが、頻回投与は禁忌。
  変力剤(どの薬剤を使用するか)/昇圧剤:ドパミン
  酸素化を支持するためのPEEP
  必要に応じて酸塩基、電解質、グルコースの異常を修正する
・肋間神経ブロック
  開胸術の前または閉鎖時
・胸腔内局所麻酔
  通常は閉鎖と胸腔ドレーンによる抜気後に行う
・領域投与のための局所麻酔量
  1-2mg/kgが推奨される
  胸腔チューブが装着されている間は6-8時間毎に反復投与してよい
  ブピバカインまたはロピバカイン 作用時間はより長い/ロピバカインはブピバカインより安全である
・覚醒
 低用量オピオイドおよび/またはケタミン持続点滴を継続する
 メロキシカム 0.1mg/kg
 胸腔内局所麻酔
 α-2鎮静/鎮痛剤を考慮する

トピック3 麻酔管理 Vol.1
  • 一般外科/麻酔科

・麻酔管理
 動物は何のために来院するのか?
  選択的手術(OVH)、その他の問題(運動不耐性、斜頚)、毒物への暴露(レーズン)、別の要因(食後)に影響を受けた症状、等
・シグナルメント/身体検査所見
 年齢、品種等
 T/P/R、粘膜色、意識状態、水和状態、腹部触診
 救急の場合には、食事摂取の状況にも注意する
・検査室検査所見
 CBC
  貧血、タンパク質、炎症
 血清化学的検査
  BUN、Cr、肝酵素、グルコース
 尿検査
  USG、タンパク尿
・新たに診断検査を追加できるか、または追加すべきか?
 ECG
  不整脈 – 種類は?
 MRI
  脳腫瘍 – 位置と大きさ
 超音波画像診断
  胸腔内液体貯留 – 心原性または非心原性
・麻酔管理
  麻酔計画は全ての情報を基にして作成する
  利用可能な薬剤、支持装置とモニター機器、特定の状況(例 MRI)についても考慮する

トピック3 麻酔管理 Vol.2
  • 一般外科/麻酔科

・Case No. 1 – 若齢動物 Tana
・シグナルメントおよび客観的データ
 活発で友好的な、3.5ヶ月齢のボクサーの子犬、OVHおよび矯正的整形外科手術のために来院した
 TPR正常
 PCV 36%、TP 6.0 g/dl、グルコース 85 mg/dl、BUN 5-15 mg/dl
・評価および注意点
 健康、活動的、短頭犬種
 日常的ではあるが疼痛を伴う手技
 低いPCVは年齢によって説明できる
 低血糖症、低体温症、低血圧症を発生する可能性がある
 心拍出量は心拍数に依存 する(vs. 一回拍出量):心拍数は正常の高めで維持する。
 末梢血管抵抗(つまり血圧も)は低い可能性がある
・目標
 術前の鎮静、麻酔の円滑な導入と維持、適時の覚醒、周術期の鎮痛
 低血圧症を最小限にする
 低血糖症について評価する
・前投薬 – SCまたはIM経路
 オピオイド[どの薬を選びますか]
  望ましい特性
   鎮静、鎮痛、麻酔薬の減量
   費用を考慮する
   作用時間を考慮する
  望ましくない特性
   一部で嘔吐が起こる
   ほとんどの犬で徐脈が起こる
   スケジュール – 記録管理と濫用
・前投薬 – SCまたはIM経路
 抗コリン性作用薬剤
  (例、アトロピン0.02-0.04 mg/kg:SCなら0.03mg/kg、IVなら0.02mg/kg、ダックスはより高用量が必要)
 望ましい特性(特に、このような短頭種の子犬)
  心拍数の増加、分泌の減少

トピック3 麻酔管理 Vol.3
  • 一般外科/麻酔科

・麻酔導入
 プロポフォール、ケタミン、(ベンゾジアゼピンと共に)、3.5ヶ月齢の子犬なのでアルファキサロンの投与も可能
 2ヶ月齢未満の患者には、プロポフォールが最善の選択肢になる
 カテーテルからのIV投与を前提とする
・プロポフォール
 プロポフォール:望ましい特性
  迅速な発現、作用時間が短い、作用が長引かずスムーズな覚醒が得られる
 プロポフォール: 望ましくない特性
  より高価である(ケタミンに比べて)
  低血圧症、低換気などの問題
・麻酔維持
 吸入麻酔薬
  イソフルラン
   セボフルランよりも安価である
   心血管系および呼吸器系への影響は極めて類似している
   他の薬剤と併用した場合、導入および覚醒のパラメータは同等である
・鎮痛
  前回投与してからの時間を考慮する
  術前のオピオイドは、患者が経口薬のNSAID(3.5ヶ月齢)やオピオイドなどに移行できるまで、繰り返し投与できる
  局所麻酔薬と併用して領域をブロックする

トピック3 麻酔管理 Vol.4
  • 一般外科/麻酔科

・ディスカッション
 以下の前投薬の長所と短所
  アセプロマジン(特に特定の品種)
   若齢の動物にアメリカではよく使われる。オピオイドとの併用。鎮痛作用はない。低血圧をおこしやすい。ボクサーには使用注意。
  アルファ-2作動薬
   鎮静と鎮痛が得られるが、鎮痛は短い。リバースがかけられる。心拍を考えるとこの症例ではファーストチョイスではない。
   デクスメデトミジン
  ベンゾジアゼピン
   ジアゼパム、ミダゾラム(フルマゼニルが拮抗薬)

トピック3 麻酔管理 Vol.5
  • 一般外科/麻酔科

・ディスカッション
 身体検査と検査所見が正常な、同年齢の子猫のOVHであった場合、麻酔計画はどのように変更しますか?
 アメリカで一般的な健康な子猫の避妊手術に対する麻酔プロトコール:デクスメデトメジン、ケタミン、オピオイド、術後にα2拮抗が一般的(吸入麻酔を用いない場合)

トピック3 麻酔管理 Vol.6
  • 一般外科/麻酔科

・Case No. 1 推奨されるモニター
 心拍数
  聴診器、ドプラー、パルスオキシメーター、ECG(調律を記す唯一の方法)
 間接的血圧測定
  オシロメトリック、ドプラー
 陽圧換気/呼吸数および深度…
 …体温
  温度計またはサーミスタ
 追加的なモニター
  パルスオキシメーター
  短頭種の患者では、抜管時に最も有用である
  カプノグラフ
・推奨される支持療法
 事前の酸素化
  特定の患者(短頭種)および、特定の麻酔導入薬を使用した場合の重要性が高まっている
 静脈内輸液
  正常な患者では5 – 10 ml/kg/時
 外部からの熱源
・その他に考慮すること
 心拍数を正常範囲内(正常から正常高め)に維持するための抗コリン作用薬
  心拍出量に影響をおよぼすため
 抜管後の酸素吸入
  患者が短頭種であるため
 輸液にブドウ糖?

トピック3 麻酔管理 Vol.7
  • 一般外科/麻酔科

・ブドウ糖の投与を選択した場合
 何パーセントで投与するか?
 目標とする血中グルコース濃度は? 150mg/dl以下を目標。
 これをどう計算するのか?
  Vconc= (Vdil X Cdil )/ Cconc
 ブドウ糖は50%が利用できる
 輸液流量が10ml/kg/hなら1%。5ml/kg/hなら2%。5%は高血糖になる可能性が高いので注意。
 麻酔に使う薬剤で、メデトミジンなどのα2作動薬、ケタミンは血糖値を上昇させる。
・質疑応答

トピック3 麻酔管理 Vol.8
  • 一般外科/麻酔科

・麻酔:腎臓病
 腎不全(vs. 機能障害)
  ネフロンの機能的能力が75%を超えて喪失する
  BUNおよびCrの増加
  ホメオスタシスの変化に応じて尿量および尿成分を変動させる能力が制限される(または失われる)
・腎不全患者に伴う問題
  貧血、高血圧症、代謝性酸血症、高カリウム血症、乏尿症/多尿症/無尿症
・症例管理
 以下の患者が来院した
  5歳 去勢雄 短毛在来種猫
  排尿時の緊張および進行性の元気消失が 2-3日にわたってみられた
  本日は食欲不振である
・麻酔前の管理
 病歴から尿道閉塞が示唆される
 触診およびX線または超音波検査で確定する
 心血管系(心拍数および調律)の機能、水和状態、電解質異常を評価し治療する
・麻酔前に考慮すべき点
 麻酔計画
  薬剤の選択、支持およびモニター、必要であれば緊急時対応策
・質疑応答
 鎮静ならブトルファノールとミタゾラムをIVで、麻酔までとなればそれにケタミンをプラスする。
・カテーテルを通して閉塞解除するだけの計画とした場合の麻酔アプローチ
 短時間作用型または可逆性の薬剤
 閉塞解除する際に局所麻酔薬を注入(用量に注意する)
 尾椎硬膜外 – リドカイン

トピック3 麻酔管理 Vol.9
  • 一般外科/麻酔科

・高カリウム血症 - ECG の異常
 高いテント状T波、P-R間隔の延長、P波の欠如、徐脈
・高カリウム血症 - 治療
 尿排泄の促進/腹腔ドレーン
  患者の再水和 輸液の種類は? ラクトリンゲルで十分。生食は酸血症でさらにカリウム濃度を上げる可能性がある。
  利尿剤の利用(ラシックス/マンニトール/ドパミン)
 酸血症の補正 – なぜか
 低カルシウム血症の補正 – なぜか

トピック3 麻酔管理 Vol.10
  • 一般外科/麻酔科

・代謝性酸血症
 体液量補正の後に、緩衝性薬剤(例、NaHCO3)の投与
  体重(kg) X BE X 0.3
  1-5 mEq/kg NaHCO3 IV
・低カルシウム血症
 10%塩化カルシウムを0.1 ml/kgまで、20-30分かけてIV
 10%グルコン酸   カルシウムを0.3 ml/kg、20-30分かけてIVまたは、希釈して皮下投与する

トピック3 麻酔管理 Vol.11
  • 一般外科/麻酔科

・症例管理
 前の症例は、‘腎後性’閉塞の例であった
 ‘腎性’疾患の患者において、腎血流量/GFR/腎臓保護の維持に役立つツール(薬剤)は何か
 犬と猫との相違は?
・麻酔:腎臓病
 水和と尿路の開通を確認できたら、尿産生を促すために必要に応じて利尿剤を追加しても良い
  選択肢は、マンニトール、フロセミド、ドパミン、フェノルドパム
・マンニトール
 0.25 - 0.5 g/kg IV、30分
 0.1 g/kg/時 IV、CRI
 脱水を予防するため、同時に継続的な輸液投与することが必要不可欠である
 透析を予定している場合はマンニトールの使用は要確認。
・質疑応答

トピック3 麻酔管理 Vol.12
  • 一般外科/麻酔科

・フロセミド
  2.0 - 5.0 mg/kg、IV
・ドパミン
  1-5 µg/kg/min、IV
  犬と猫では種差がある
・フェノルドパム
 非常に有効な薬剤で、猫にも有効だが、高価すぎる。
・麻酔:腎臓病 それ以外に考慮すべき重要な点
 その患者には貧血があるか?
 その患者の正常血圧はどれほどか?
 これらは麻酔管理にどのような影響をおよぼすか?
 尿産生量のモニターは?
・症例
 11歳のテリア、複数の脂肪腫摘出のために来院
 慢性腎臓病
  BUN 40、Cr 2.6、USG 1.016
  PCV 29%、TP 7.2 g/dL
 麻酔計画を作成して下さい

トピック3 麻酔管理 Vol.13
  • 一般外科/麻酔科

・心疾患患者の麻酔管理
・麻酔と心疾患
 目標は、組織への適切な酸素供給量を維持し、正常な生命機能を支持すること
 酸素供給量
  心拍出量 X 酸素含有量
・麻酔と心疾患
 心拍出量に影響を及ぼす要素はたくさんあるが、一番影響があるのは心拍数と一回拍出量
・心拍出量 = HR X SV
  心拍数(調律)は自律神経緊張に影響を受ける
  一回拍出量は、前負荷、後負荷、および収縮性に影響を受ける
・MAP = CO X SVR
・我々の患者には様々な心疾患が認められる
 先天性:例、VSD、PDA
 後天性:例、HCM、僧帽弁逆流
 特定の疾患の臨床症状には幅がある
・2種類の一般的な心疾患の管理に焦点を当てる
 一つは若齢犬、もう一方は高齢犬(そしてまれに猫)の疾患
  −   動脈管開存症
  −   僧帽弁逆流
・症例:動脈管開存症
 ジャーマンシェパード、4カ月齢の子犬 左側に5/6の連続性雑音と反跳脈が聴取される
 PCV 38, TP 5.9, グルコース 97
 外科的矯正のために来院
・一般的な注意事項
 年齢関連性
  低血糖、低体温 心血管系が未熟であること
 施術関連性
  開胸術 – O2 および CO2 に関する問題、不整脈、鎮痛、出血
・欠損/疾患関連性
 脈圧の増大が予測される
  収縮期は高く/拡張期は低い
 容量過負荷(左心)が予測されるため、輸液には注意する
 全身灌流を保てるように心拍数を維持しなければならない

トピック3 麻酔管理 Vol.14
  • 一般外科/麻酔科

・動脈管開存症:麻酔計画の作成
 前投薬、麻酔の導入、麻酔の維持、支持、モニター、他には?
・ディスカッション
・動脈管開存症
 動脈管結紮中に動脈ラインでトレースした心電図波形

トピック3 麻酔管理 Vol.15
  • 一般外科/麻酔科

・症例検討
・シグナルメント
 12歳 去勢雄 トイプードル
 歯のスケーリング/抜歯が必要である
 3週間前の診察で僧帽弁逆流症と一致した雑音を聴取  – 治療...
 ベナゼプリル、ラシックス、抗生剤
・現在の所見
 心拍数140 bpm、 全収縮期性雑音3/6が聴取される
 呼吸数 18 bpm 聴診では正常
 気管を触ると咳が誘発される
 BUNとクレアチニンは軽度に上昇
・評価
 臨床検査やX線検査を再評価しないと治療効果の確認は難しいが、飼い主の印象では、症例はより活発になり咳も減っているとのことであった(つまり再検査は望んでいない)
・目標
 心血管障害を最小限に抑え、臓器(例、腎臓)への灌流は最大限にする
・麻酔プロトコール
 前投薬
  オピオイドおよび抗コリン作用薬
  心血管系の安全を保ちつつ、鎮痛と鎮静が得られる
 導入
  既知の疾患によって異なる
・麻酔導入
  ケタミン/ベンゾジアゼピン
  フェンタニル/ベンゾジアゼピン
  エトミデート/ベンゾジアゼピン
・麻酔維持
  イソフルラン (セボフルラン)
  バランス麻酔法
   非経口/領域

トピック3 麻酔管理 Vol.16
  • 一般外科/麻酔科

・オピオイド
 イソフルランの用量(犬)は、フェンタニルの点滴(以下の用量)を併用すれば最大50%まで低減できる
  20 µg/kg/時 (0.33 µg/kg/分)
 それより高い用量ではMACをさらに減少させ、より低い用量では鎮痛性に作用する
Hellyer et al, 2001
・犬におけるフェンタニル
 麻酔量の減少
 Hug et al & Hellyer et al
・オピオイド
 高用量では呼吸抑制がよく起こるため、通常は換気が必要である
 心血管機能を最適に維持するには 。、 徐脈を治療する
 覚醒の最大30分前から点滴を中止するか投与速度を下げる
・併用または代替として使用できる
 ケタミン 10 – 20 µg/kg/分
  脊髄の疼痛促進系または“ワインドアップ”に影響を与える
 リドカイン 20 – 30 µg/kg/分 
  麻酔薬減量のために追加し、鎮痛効果があるかもしれない
・抜歯する場合、領域性の鎮痛という選択肢を考慮する
・症例検討
 この患者の麻酔導入にプロポフォールを使用する際の良い点と悪い点は?
  悪い点:血管拡張性の薬剤でる。血圧が低下する。これに対処するためには輸液のボーラス投与だが、心不全を悪化させる可能性がある。
 アルファキサロン?
・推奨される支持治療
 気管内チューブのカフを十分に膨らませる (歯科)
 機械的換気
 控えめな静脈内輸液投与 (2 – 5 ml/kg/時)
 血圧を維持するため、必要に応じて変力剤を投与する
  ドパミン、ドブタミン
 外部からの熱源
・その他に考慮すべき事項
 麻酔導入の2〜3時間前から輸液を開始する
 ドパミンまたはマンニトール点滴により腎臓灌流を維持する
 心拍数を正常の高値で維持するための抗コリン作用薬

トピック3 麻酔管理 Vol.17
  • 一般外科/麻酔科

・パルスオキシメーターの数値が開始時の99%から88%に低下していた場合、この症例で考えられる原因は何か?
 どのように評価し、処置すればよいか?
・心室性期外収縮が認められたら患者をどのように評価し、必要な場合はどう治療すべきか?
・歯科処置直後の期間
 スケーリングのみを実施した場合、または歯科神経ブロックを適用した場合は、鎮痛剤は必要ない場合がある
 オピオイドを1回皮下注射した後に液剤の経口鎮痛薬を投与する
 腎臓の酵素値が上昇している場合は、NSAIDは望ましくない

トピック3 麻酔管理 Vol.18
  • 一般外科/麻酔科

・麻酔と糖尿病
・糖尿病
 インスリンの絶対的または相対的な不足
  犬は一般に、インスリン依存性である
  猫は常にインスリン依存性というわけではないが、やはり治療は必要かもしれない
 インスリンの欠乏はグルコース利用不足につながり、コルチゾールやグルカゴンなどのホルモンへの対立作用が無いことで異化状態が進行する
 ケトン形成、浸透圧性利尿、代償性多渇症(または脱水と高窒素血症)および多食症を起こす可能性がある
 ケトアシドーシスを発症している患者は、筋力低下、沈鬱、または意識障害を示し、頻呼吸が一般的にみられる
 体液量減少および電解質異常も認められ、他の合併症を誘発することがある
 これらの患者では、(緊急時を除き)麻酔前の安定化が不可欠である
 次の症例検討は、安定化した(または、少なくともインスリン治療を受けている)患者について述べたものである
・症例検討
 高齢の糖尿病犬。3-4/6の心雑音があり、心筋機能が中程度低下している。創傷修復のため麻酔を施す
 診察時のグルコース 322
 管理計画を作成する?
 あなたの選択と補助治療(例、抗生剤)について、正当性を説明しなさい

トピック3 麻酔管理 Vol.19
  • 一般外科/麻酔科

・症例検討
 犬が長期的にインスリン治療を受けている場合、朝から麻酔の2時間前までに、少量の食事と共に半量のインスリンを投与するのが適切である
 麻酔を導入し、血糖値を調べる (導入後~30分)
 血糖値が300-400mg/dL(またはそれ以上)の場合、0.1IU/kgのレギュラーインスリンをIV投与して治療し、30-60分後に再検査する
 血糖値が60-70mg/dL未満の場合は、ブドウ糖を点滴として投与する(50mg/dL未満の場合はボーラス投与)する
 目標は、できるだけ早く、動物が食事を摂取し、通常のインスリン療法に戻れるようにすることである
 どの薬剤を使うと、それを達成しやすくなるのか?
 ’禁忌’になるのは、どの薬剤か?

動画要約(全文)

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