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VMN セミナー情報

  • 専門医に学ぶ講演会
  • 科目
開催日: 2016年7月11日(月)

神経学セミナー2016

1. 痙攣発作–救急治療
2. 非外科的脊髄疾患
3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ

講師

Simon R. Platt, BVM&S, MRCVS, DACVIM (Neurology), DECVN
Professor of Neurology and Neurosurgery
College of Veterinary Medicine
University of Georgia

関連ハンドアウト(参考資料)

オンデマンド

1. 痙攣発作–救急治療 vol.01
  • 脳神経科

・痙攣発作の緊急事態
 痙攣発作の分類
  群発発作- 24時間以内に2回以上の全身性痙攣発作が起こる
  てんかん重積状態 - “休み”なく2回以上の発作が起こる、または1回の発作が5分以上続く
 ※これらは即時の治療を要する。それにより長期的な予後の改善が見られる。
・疫学
 てんかん重積状態(SE)は、あらゆる原因により痙攣発作を起こす犬の59%に認められる
 SE は特発性てんかんの犬の5%、猫の19%にみられる
 オーストラリアン・シェパード/ボーダーコリーは好発犬種である
 SEの原因 = 特発性てんかん 27% / 構造性てんかん 32-35% / 原因不明 25-30% / 反応性てんかん 7-11% / 急性脳脊髄炎関連 6%
 特発性てんかんでてんかん重積となった動物は死亡するものもいる。

1. 痙攣発作–救急治療 vol.02
  • 脳神経科

・てんかん重積状態全身性の影響
・呼吸障害
  (1) 機械的障害:肋間筋なども影響を受けている。
  (2) 呼吸中枢障害:脳内の電気的機能が暴走し、二酸化炭素濃度の上昇に反応できない。
  (3) 自律神経機能障害:呼吸回数、深さがコントロールできない。
・心臓の障害
  (1) 自律神経機能障害:心拍数、調律、収縮性などに影響が出る。
  (2) 低酸素症/虚血性傷害
  (3) 最終的に不整脈が起こる
・腎障害
  (1) 低血圧
  (2) 高体温性筋肉傷害
  (3) ミオグロビン尿症と灌流低下:腎臓の機能障害が起こる
・神経への影響
 低酸素症および低血糖症
  (1) 小脳 /海馬/大脳(協調不全た失明などで、一過性のこともあるが、永続的なこともある)
  (2) 90分後には不可逆性傷害になる
 アシドーシス/電解質/興奮性毒異常(グルタミン酸)
・けいれん発作の猫[動画]
 静脈内カテーテルが確保できない時に何ができるか?

1. 痙攣発作–救急治療 vol.03
  • 脳神経科

・てんかん重積状態
 来院時の治療管理
 治療と並行して病歴を聴取する
 直腸温 – 104˚F/40˚C<であれば冷却する
 血液検査 – 電解質/ Ca++ / グルコース / 胆汁酸 / 中毒スクリーニング / PCV / TP
 +- 10%グルコース溶液; 100 mg/kg IV vs. カロシロップ PO(子犬、子猫、猟犬は低血糖リスクが高い)
 酸素供給 – ‘フローバイ’:酸素のチューブを口の近くに向ける方法
 +- IV カテーテル

1. 痙攣発作–救急治療 vol.04
  • 脳神経科

・てんかん重積状態ステップ1
 ベンゾジアゼピン
  ジアゼパム 0.5 - 1.0 mg/kg IV
  ジアゼパム0.5 - 2.0 mg/kg 直腸内
  ジアゼパム0.5 - 2.0 mg/kg 鼻腔内
  ミダゾラム 0.2 mg/kg IV/IM/鼻腔内
 ※すでにフェノバルビタールを投与されている場合、肝臓代謝亢進で低容量では効果が出ない。
・ミダゾラム
 水溶性BZDのみが利用可能である
 IV, CRI, IM, IN および頬粘膜から投与できる
 生理食塩水やグルコースと混合できる
 直腸内投与では有効率が低く、一定せず (0-50%)、 Tmaxの延長を伴う
 0.066 – 0.22 mg/kg IM または IV
 人では、ミダゾラムIM投与の方がロラゼパムIV投与よりも効果的である!
・てんかん重積状態 ステップ2
 フェノバルビトン
  フェノバルビトン 2 - 4 mg/kg IV または IM
  作用発現は20分
  必要に応じて、30分間隔で反復投与する
  総累積投与量 – 20 - 24 mg/kg / 24 時間
・負荷用量
 フェノバルビトン総負荷用量
 18 から 24 mg/kg 24時間かけて静脈内投与

1. 痙攣発作–救急治療 vol.05
  • 脳神経科

・てんかん重積状態ステップ3 (a)
 BZDの定速注入
  ジアゼパム 0.5 - 2.0 mg/kg/時 IV CRI 0.9% 生食水
  ミダゾラム 0.2 mg/kg/時 IV CRI 0.9% 生食水
  ポリ塩化ビニールに付着し、光に反応する
  呼吸抑制の可能性がある
  効果を見ながら3〜6時間毎に投与量を下げる
・てんかん重積状態ステップ3 (b)
 レベチラセタム (Keppra) IV および IM
  100 mg/ml
  抗痙攣薬および抗てんかん薬
  10-60 mg/kg を10分かけて IV 8時間持続する– 必要に応じて反復投与
  すでにPBを投与している場合、高用量を投与する
  最大濃度に到達する平均時間は40分
・犬におけるレベチラセタム IV投与
  無作為、プラセボ対照二重盲検研究 SEまたは群発発作のある犬19頭を研究対象とした
  ジアゼパムにレベチラセタムのIV投与を追加すると、プラセボおよびジアゼパム単独(10%)に比べて56%が反応した
  プラセボ群の犬はレベチラセタム群と比較して、ジアゼパムのボーラス投与を必要とした回数が有意に多かった (Hardy et al., 2012)
・てんかん重積状態ステップ4
 プロポフォールによる昏睡
  抗痙攣作用
  1-4 mg/kg IVを効果が出るまでボーラス投与
  持続点滴 (0.1-0.6 mg/kg/分)
  費用について考慮する
・プロポフォール
 プロポフォール注入症候群 (>48時間)
  ミトコンドリアの障害により、エネルギー・ミスマッチが起こる
  代謝性アシドーシス, 高脂血症, CKの上昇, 横紋筋融解, 高カリウム血症, 腎不全および心血管虚脱
  猫では赤血球の酸化障害を起こすリスクがある
  ハインツ小体の形成
 溶血性貧血

1. 痙攣発作–救急治療 vol.06
  • 脳神経科

・ステップ5
 ケタミン
  1998年に人のSEで初めて使用された
  難治性痙攣性SEおよび超難治性SEに対して使用された
  30分以上けいれん発作が続く場合に使用する。
  1-5mg/kg IV (IM?) 、次に 5 mg/kg/hr
  犬では肝臓で代謝される
  緊急反応を防ぐため、ミダゾラムを追加投与する
・ステップ6?
 ラコサミド
  2009年からIV溶液剤として利用できるようになった
  官能化アミノ酸
  タンパク結合が低い
  他の抗てんかん薬の血漿濃度に影響しない
  腎臓から排泄される
  動物モデルのSEに対して有効
  人のSE全体では56%の成功率
  犬や猫でのデータはない(2016時点)
・ステップ6?
 フォスフェニトイン
  フェニトインのリン酸エステルプロドラッグ
  注射後、フォスファターゼ酵素によってフェニトインが開裂される
  毒性はフェニトインに関連している
  運動失調および嘔吐
  15 mg/kgの投与量は忍容された
  フォスフェニトインの80%は30分でフェニトインに変換されるため、犬では急速に代謝されることが示唆される
・ステップ7
  最後の砦!!
  吸入麻酔
  デスクメデトミジン 5-15µg/kg IV/IM/SQ ボーラスまたは1時間当たり
  臭化カリウムの直腸内投与 – 100 mg/kgを4時間毎に6回 即時効果は得られない。
・ステップ8
 脳浮腫
  ステロイド?
  フロセミド 1 mg/kg IM, IV
  20%マンニトール 0.5 g/kg IV
  フローバイによる酸素供給 vs. 過換気?
・ステップ9
 痙攣発作後の治療管理
  胸部および腹部の画像検査
  尿検査/尿カテーテル留置
  ECG
  CT/MRI
  CSF
  +-胃洗浄

1. 痙攣発作–救急治療 vol.07
  • 脳神経科

・群発発作 選択肢 1
  ジアゼパム 0.5 - 2.0 mg/kg 直腸/鼻腔内
  維持投薬に追加する
  群発発作の数と、1回の群発発作で起こる痙攣の数を減らす
  既にPBを投与している場合、効果は低い – さらに高用量を使用する
・群発発作 選択肢 2
  クロラゼプ酸 0.5 mg/kg q8-12 hrs PO
  代謝されてノルジアゼパムになる
  耐性を生じるが、ジアゼパムの場合よりも遅い
  有効性は2ヵ月だけなので、“突破口的な対策”として有用である
・群発発作 選択肢 3
  レベチラセタムの経口パルス療法
  速放性製剤 20mg/kg 8時間毎 PO
  徐放性製剤 20mg/kg 12-24時間毎 PO
・痙攣発作の緊急事態 まとめ
 SEは生命に関わる緊急疾患である
 脳傷害を防止するため迅速にアプローチする
 単独で常に有効なアプローチ法はない
 群発発作の治療は慢性および急性治療を組み合わせて行う
・質疑応答

2. 非外科的脊髄疾患 vol.01
  • 脳神経科

・イントロダクション
 内因性(非外科的)脊髄疾患で主に考慮すべき問題…
  血管性 – 虚血性ミエロパシー
  炎症性 – 髄膜炎/脊髄炎
  奇形 – キアリ/脊髄空洞症
  変性性– 変性性ミエロパシー
・虚血性ミエロパシー
 脊髄への血液供給
  腹側脊髄動脈から出ている中心動脈 - 脊髄の2/3
  非対称性の供給 = 40-80%
  背外側動脈は脊髄側面に血液供給している
  すべて終動脈血流系
・繊維軟骨塞栓症 FCE

2. 非外科的脊髄疾患 vol.02
  • 脳神経科

・犬の虚血性ミエロパシー 臨床像
  超大型犬種48%/小型犬種6%
  ミニチュア・シュナウザーに多い
  雄 2.5:1
  74% が 25Kg を超える
  平均年齢 4.5歳
  L4-S3 = 43-50%
  C6-T2 = 30-33%
  T3-Ls = 27-42%
  53-86%が非対称性である
  12% が痛覚を消失する
 甚急性(<6hr)
 非進行性
 80% が外傷/運動と関連する
 60% が初期に疼痛を伴う
 100% が24 時間以内に最大となる
・犬の虚血性ミエロパシー 診断
 臨床像
 臨床的除外
 X線学な除外
 脊髄造影検査 – 26-47% で脊髄の腫脹
  acute noncompressive nucleus extrusion(急性非圧迫性核脱出)に注意する
 CT – X線検査および脊髄造影検査と同様
 CSF – 非特異的異常所見(46%)、または正常である
 MRI - 限局性、境界は比較的明瞭、髄内病変、主にGM
・犬の虚血性ミエロパシー 転帰
 84%が2週間以内に歩行可能まで回復する
 自力歩行できるまでの期間中央値=6日
 最大回復までの期間中央値=3.7ヶ月
 MRI が正常100%/ 2 椎体長の病変 =不良
・犬の虚血性ミエロパシー 治療
 重症例では患者の安定化
 介護
 理学療法
・急性四肢不全麻痺…第1日(動画)
 支持療法を
・2週間後…(動画)
・猫の虚血性ミエロパシー
 大半が7-12歳
 C1-T2 部位が多い
 2-6週間で回復する可能性がある
 臨床症状は類似している
 診断検査結果も同様である

2. 非外科的脊髄疾患 vol.03
  • 脳神経科

・犬の変性性ミエロパシーDM 用語
 変性性ミエロパシー (1973)
 慢性神経根ミエロパシー (1975)
 ジャーマン・シェパードのミエロパシー (1978)
  主にT3-L3の白質疾患
  性差なし
  発症年齢
   (5)8歳 から 14 歳
  平均年齢 9 歳/コーギーは11歳
 罹患期間
  6ヶ月から 3 年
・犬の変性性ミエロパシー
 遅発性疾患
 後肢における非疼痛性進行性筋力低下
 他の純血種にも発生する
 ボクサー、チェサピーク・ベイレトリバー、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ローデシアン・リッジバック
・臨床所見
 非対称性のUMN不全麻痺および四肢の運動失調
 歩行不能な不全対麻痺および対麻痺
 LMN対麻痺
 前肢の筋力低下
 弛緩性のLMN四肢不全麻痺/麻痺
・初期の臨床症状(動画)
 運動失調、軽度の痙性麻痺、爪の磨耗、反射は正常から亢進、膝蓋反射の低下?、進行性(2〜3ヶ月で判断)
・進行したステージ…(動画)

2. 非外科的脊髄疾患 vol.04
  • 脳神経科

・DMに類似する疾患
  ハンセンII型椎間板疾患、変性性腰仙部狭窄症、脊髄腫瘍、脊髄嚢胞、骨性圧迫病変、整形外科的疾患
・診断検査
  単純X線検査、脊髄造影検査、コンピュータ断層撮影法、MRI、CSF分析、病理検査
・DMは遺伝するのか?
 純血種犬、品種傾向、型通りの発症年齢から家族性の影響が疑われる
 染色体31 → SOD1遺伝子
 エクソン2におけるGからAへのトランジション変異
 グルタミン酸からリジンへのミスセンス変異
 年齢関連性の不完全浸透
 Coates JR, et. al. J Vet Int Med 2007
・遺伝型の概要
 A/A
  危険性あり
  発症する危険がある
  突然変異対立遺伝子を伝達する
 A/G
  キャリアー
  発症する可能性は低い
  50%の確率で突然変異対立遺伝子を伝達する
 G/G
  正常
  発症する可能性はほとんどない
  “正常で保護的な”対立遺伝子を伝達する
・治療 / 予後
 内科療法
  有効性が証明されている薬物療法はない
  アミノカプロン酸
  N-アセチルシステイン
  ビタミンE、B12
 理学療法
 予後
  長期的には不良である
・適切に管理された毎日の理学療法は、変性性ミエロパシーが疑われる犬の生存期間を延長する
 能動的運動、受動的運動、マッサージ、水治療法、肢端の保護
 結果(n = 22頭)
  集中的な療法 – より長く生存した(平均 = 255 日、P<0.05)
  中程度の療法 – 平均130 日生存した
  療法を受けなかった犬 – 平均55日生存した

2. 非外科的脊髄疾患 vol.05
  • 脳神経科

・椎間板脊椎炎
 8/10がブドウ球菌によるもの、2/10が他の細菌/真菌/異物
 血液および尿の培養検査
 X線では骨性炎症が認められる
 内科的 >> 外科的
 強化アモキシシリン/TMS/セファレキシン/エンロフロキサシン
 3-5日以内に改善するはずである。治療は8週間は行うべきである。
 予後は良好?
・感染性髄膜炎
 ウイルス性、原虫性、真菌性、細菌性
 限局性または多発性
 神経症状もしばしば見られる – 髄膜-脊髄炎
 常に発熱や敗血症を伴うわけではない
 +- 全身症状
 進行性、多発性
 サルファ剤 15mg/kg bid / クリンダマイシン 10 mg/kg bid vs. ドキシサイクリン vs. メトロニダゾールによる治療
・原因不明の髄膜炎
 肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME), 壊死性疾患
 若齡で小型の純血種
 神経症状はしばしば見られる
 全身症状はない
 進行性、多発性
 免疫抑制量のステロイド
 シトシン 50 mg/m2 q12h SC x 4 回 3週間毎 vs. アザチオプリン vs. シクロスポリン

2. 非外科的脊髄疾患 vol.06
  • 脳神経科

・ステロイド反応性髄膜炎
 ステロイド反応性髄膜炎 - 動脈炎(SRMA)は、特異的な免疫介在性疾患である
 この反応は、中枢神経系の動脈および髄膜を標的にして起こり、ビーグル、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ボクサー、ジャーマン・シェパード・ポインター、ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリバー、ワイマラナー、グレイハウンドにみられる
 性差なし / 大半が若齢犬(6-18ヶ月齢)
・ステロイド反応性髄膜炎 治療
 プレドニゾンを用いた長期間の治療
  4mg/kg q24h PO あるいは IV を2日間
  2mg/kg PO を1 - 2週間
  1mg/kg q24h を1ヶ月間
 免疫抑制剤の追加が必要なこともある - アザチオプリン1.5mg/kg PO q48h
・ステロイド反応性髄膜炎 予後
 積極的治療を行った場合、若齢犬では良好
 慢性症例では頻繁に再発する - 予後は警戒を要する
 ボクサーは他犬種よりも予後が良い
 8/10頭の犬は、治療後29ヶ月まで臨床症状が出ていない
 CSF / 血清 CRPをモニターする

2. 非外科的脊髄疾患 vol.07
  • 脳神経科

・脊髄空洞症(水脊髄)症(SM)
 脊髄空洞症 - CSF流路の閉塞によって脊髄内に液体が充満した空腔(空洞または嚢胞)を生じる疾患
・脊髄空洞 MRI像
・脊髄空洞症–なぜ起こるのか?
 外傷性、炎症性、先天性、閉塞性 – 椎間板 / 腫瘍、キアリ様奇形関連性(一番原因として多い)
 髄液流と脊髄への圧が変化し、脊髄に“穴”を開けてしまう
・キアリ様奇形 (CM)(尾側後頭骨の奇形)
 主に小型犬に多く発症する。
 正常なCSFの流れ
  CSF流出 – 収縮期 – 心臓収縮
  CSF流入 – 拡張期 – 心臓弛緩
・キアリ様奇形 =後頭骨の奇形=頭蓋骨内の過密状態
・正常な頭蓋骨 / 小脳とは?
 圧が上がり髄液の流れを妨げる。
・CSF流への影響(動画)

2. 非外科的脊髄疾患 vol.08
  • 脳神経科

・SMの臨床症状
 引っ掻き動作、脊柱側弯、疼痛、運動失調、不全麻痺
 すべてのSMの犬が臨床症状を現すわけではない(~ 1/3)
 空洞の幅および位置によって異なる
 幅広い空洞 = 疼痛 +/- 引っ掻き動作
 SMの犬の多くは無症状または軽微な症状だけである
 “様子を見ることに問題は”???
 SMの子犬を産出する可能性 がある
 SMによる疼痛のある子犬を産出する可能性がある
・SMの臨床症状
・内科療法
 初期は痛みと、CSFの異常な流れのコントロールが重要。
 フロセミド 1-2 mg/kg 1日2回で開始 する
 不十分であればプレドニゾンを 0.5-1.0 mg/kg /日で追加する
 不十分であればガバペンチンを追加する
 不十分であれば外科手術を再検討する
 更に、オメプラゾール(CSFの圧低減)、プレガバリン、アマンタジン、針治療など
・外科的治療法
 大後頭孔減圧術
 C1 椎弓切除術
 硬膜切除術
 問題点は合併症率と瘢痕形成である。成功率は50%程度。
 内科的管理が奏功しなかった患者に適応する
・まとめ
 非外科的脊髄疾患は急性または慢性に生じる場合がある
 非疼痛性 vs. 疼痛性
 一部は治療可能だが、どの症例も予後は警戒を要する

2. 非外科的脊髄疾患 vol.09
  • 脳神経科

・質疑応答

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.01
  • 脳神経科

・頭部外傷 - イントロダクション
 すべきこと :
  迅速で徹底した評価
  救命措置
  動物の継続的なモニター
・病態生理学 頭蓋内圧
 ICP は頭蓋骨内の組織と液体によって生じた圧力である
 頭蓋骨には3種類の容積が含まれている – 脳 80% / 脳脊髄液 10% / 脳血液量 10%
 頭蓋骨は拡張性に乏しい
 圧の上昇はしばしば頭蓋内圧亢進と呼ばれる
・頭蓋内コンプライアンス(モンロー・ケリー学説)
・脳ヘルニア
 CSFや血液の排出にとりカバーできなくなると起こる。
 呼吸中枢が圧迫されると呼吸できなくなる。
 脳ヘルニアが起こる間に見つけることが重要。
・頭蓋内コンプライアンス(モンロー・ケリー学説)
 ICPと頭蓋内容積の関連グラフ

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.02
  • 脳神経科

・動物の評価 迅速な全身の評価
 徹底した身体検査
 救急患者のABC
 血圧
 血清グルコース
 PCV/ TP / BUN / 電解質
 +- pO2 / pCO2
・神経学的検査
 始めに意識レベル、運動活動性、脳幹反射の評価を行う
 改変グラスゴー・コーマ・スケールは初期の神経学的状態をグレード分けし、継続的にモニターする補助として提案された
 コーマスケールは予後判定の一助として提案された
・(改変グラスゴー・コーマ・スケール) 獣医頭蓋損傷スコア(1) 意識レベル
   周囲に反応する     3
   抑鬱, せん妄, 認知症  2
   半昏睡から昏睡状態   1
・(改変グラスゴー・コーマ・スケール) 獣医頭蓋損傷スコア(2) 運動活動性
   歩行正常          3
   横臥状態 − 動かさない   2
   伸展硬直を伴う横臥状態   1

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.03
  • 脳神経科

・(改変グラスゴー・コーマ・スケール) 獣医頭蓋損傷スコア(3) 脳幹反射
   瞳孔対光反射は正常           3
   両側性の無反応性縮瞳または瞳孔不同症  2
   両側性無反応性散瞳           1
・瞳孔サイズをコントロールするのは?
 正常だと交感神経系の刺激と視覚刺激のバランスが取れている。
・直接・共感性瞳孔対光反射の異常
 両側とも中程度の瞳孔サイズ、正常
 両側性縮瞳だが、左側瞳孔はピンポイントの収縮
  交感神経に障害を受けると散瞳できない。
 左側の非対称性散瞳(無反応性の可能性がある)
  さらにヘルニアの重症度が上がると副交感神経系に障害が出て、縮瞳できない。
・改変グラスゴー・コーマ・スケールのスコアと生存率モデル。

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.04
  • 脳神経科

・脳の画像検査
 動物が安定したら、画像検査が必須である
 X線画像では骨折の範囲は分かるが、軟部組織の損傷は分からない
 脊椎損傷を併発している場合はX線画像が非常に有用である
 麻酔は常に必要とは限らない-リスクも高い!
・脳の画像検査
 頭蓋骨折は必ずしも予後因子ではない。手術が必要でないこともある。
 解放創、咬傷などは手術適応。
・脳の画像検査 CT
 急性外傷にはCTが好ましい
 迅速に結果が得られる
 出血、腫瘤病変、マス・エフェクト、骨折、血管への波及を確認できる
 CTは場合によっては麻酔なしでも可能。
・MRIと頭部外傷
 MRはわずかな実質の損傷を検出できるが、しばしば時間が掛かる
 ヘルニアはMRIの方が検出しやすい
 MRIは生存と転帰において予測的である
 必ず麻酔が必要となるので状態が安定してから

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.05
  • 脳神経科

・頭部外傷の治療 原則
 制限事項
  合併症発生率と死亡率が高い
  ガイドラインや標準的方法がない
  脳に特異的な治療法はない
  モニター能力が低い
 酸素供給と輸液が重要になる。
・頭部外傷の治療 原則
 レベル1ー動物の蘇生
 レベル2ー蘇生した動物で、頭蓋内圧亢進の症状が進行している
 レベル3ーレベル2の治療の不成功 (難治性頭部外傷)

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.06
  • 脳神経科

・レベル 1 輸液管理
 慣例的には、脳の水分含有量を減らして脳浮腫の発症を防ぐため、水分制限が提唱されていた
 実験では、積極的な輸液蘇生を行っても、損傷した脳と損傷していない脳のどちらにも重大な有害作用は起こらなかった
 頭部は30°高くし、頸静脈を圧迫しない
 血圧、心拍数、尿排出量を指標針にする
・レベル 1 輸液管理 高張液ならびに高浸透圧液
 高張液ならびに高浸透圧液
 血漿膠質浸透圧を増加させて脳間質腔から水分を引き出す
 7.5% NaCl 3 - 5 ml/kg を5分かけて投与する。 ショックからの回復、ICPの低下、CBFと酸素供給の増加、生存率の増加をもたらす
 高張生理食塩水は、マンニトールと同等にICPを下げるだけでなく、心血管を急速に蘇生させるという利点がある
 膠質液療法– 15- 20ml / kg / 24hrs
・レベル 1 酸素供給
 換気不良は2次的な損傷を招く
 気管内挿管/気管切開および陽圧換気が必要なこともある
 他に推奨がなければフローバイ(鼻のところにチューブを置いて流す)で酸素供給を行う。
 鼻腔内チューブ、マスク投与は頭蓋内圧をあげるので避ける。酸素テントもモニターし辛いので避ける。
 目標 = PaO2 > 80mmHg
     PaCO2 < 40mmHg
     SaO2 > 95%
 動脈血液ガス、パルスオキシメトリー、呼気終末CO2でモニターする
 過換気は低炭酸ガス血症による脳血管収縮作用によってICPを低下させる(酸素を供給しすぎないこと)
 過換気は脳血液量を36%減少できる可能性がある
 血管攣縮からさらに低酸素症を引き起こすリスク – 特にPCO2 が 30mmHgを下回る場合
 脳への虚血作用は予測できないため、レベル3に対して考慮する

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.07
  • 脳神経科

・レベル 2 浸透圧性利尿剤
 マンニトールはICPを低下し、脳浮腫を軽減できる
 脳灌流を改善して脳に脱水を起こし、フリーラジカルを除去することで効果を発揮する
 0.25 - 2.0 g/kg ボーラス iv
 正常血液量であることが必要( ショック状態だと腎臓に障害を起こす可能性があるので、注意する。)
 頭蓋内出血があってもリスクにはならない!!
 フロセミドIV投与の併用は意見が分かれている
・レベル 2 鎮静および疼痛管理
 重度の頭部損傷を受け、昏睡していない動物の多くは、動揺や痛みがあるため治療管理が難しい
 蘇生中の鎮静剤は、全身血圧への影響を最小にできる量に調節する;フェンタニルのような短時間作用性の麻薬系製剤
 集中治療中の鎮静剤は、臨床評価が行える量に調節する;プロポフォール
 NSAIDsによる疼痛緩和は、腎臓や血小板への影響も考慮する
・レベル 2 – その他の考慮事項 コルチコステロイド
 膜の安定化 / 脂質過酸化反応の抑制 / カルシウム蓄積の減少
 脳浮腫および炎症反応の軽減
 人の臨床試験では、コルチコステロイドが悪影響をもたらすことが証明されている (CRASH 試験)
 虚血がある場合は神経損傷を悪化させる!
・レベル 2 – その他の考慮事項 低体温療法
 中程度の低体温療法の利用が50年以上報告されていた
 脳代謝とICPを低下させる
 どの前臨床試験も、構造的損傷の軽減と行動的治療成績の改善を報告している
 臨床試験 (30-33°C) が示した結果は様々であった
 獣医療では実用的ではない。

3. 頭部外傷に対する論理的アプローチ vol.08
  • 脳神経科

・レベル 3 外科的治療
 手術を行う根拠となる頭部外傷の発生に関連した特定の異常:
  (1) 脳実質外血腫
  (2) 頭蓋冠骨折
  (3) 脳実質内血腫
  (4)頭蓋内圧亢進
 血腫を外科的に除去するまでの時間が長引くほど、患者の転帰は悪くなる
・頭蓋骨骨折
・まとめ
 頭部外傷は全身性疾患と認識し迅速に評価する
 低酸素症および低血圧は直ちに治療する
 頭部外傷は実質的に治療可能である
 将来的には脳の二次的損傷が治療の主な目標になる

動画要約(全文)

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