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開催日: 2011年10月23日(日) |
循環器セミナー 猫の心臓病 診断と治療
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オンデマンド
Vol.01
- 循環器科
- 循環器科
●猫の心臓病
後天性心疾患の心筋症は遺伝病として認識されてきているが、後天性?
●先天性心疾患
先天性の中隔欠損は犬よりも多いかもしれない。特に心房中欠損。しかし臨床的にはあまり問題にならないことが多い。
ピンポイントの心雑音は犬と同じように聴いていると聞き逃すことが多いので、聴き逃さないためには胸骨の真上で頭側尾側に前後して聴く。
小さな穴(3mm以内)であれば経過観察でよい。それ以上は内科、外科の治療が必要だと思われる。
弁の異形成も犬よりも多いと思われる。外科的介入が必要だと思われるが、予後はあまりよくない。
●後天性心疾患
細菌性心内膜炎は全身性疾患での聴診を忘れないように。MRの場合、歯周病の場合が多いので歯のケアーも重要。
猫の犬糸状虫症
Vol.02
- 循環器科
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●猫の心筋症
症状をあまり見せないので飼主が気づかないことが多い。初期は肺水腫などの症状から発見されることが多い。
レントゲン、超音波で左心房拡大がなければ他の心臓病、呼吸器疾患を疑う。
左心房の拡大が認められる場合は、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋梗塞、拘束型心筋症の4つを疑う。
肥大型心筋症は、左室壁乳頭筋の肥厚、心筋の肥大。
拡張型心筋症は左心室の短縮率15%未満になっていて心腔の拡張がある。
心筋梗塞は左室壁の運動が悪くなっっているところがあるということで見つかる。すでに血栓症を発症している猫は特に要チェック。
拘束型心筋症は診断しづらい。エコー所見で左心室の内幕が縁取りされているように白色化してることが多い。
●肥大型心筋症(動画)
長軸像で左室壁の壁が大動脈の径よりも大きければ肥大している可能性が高い。ただし、乳頭筋を含めないように注意。
短軸像では判断がなかなか難しいが、全体の筋肉の厚みをしっかり見て行く必要がある。
明け方の4〜7時くらいに発作を起こすような症状などは要注意で、早めに飼主に来院するように指示しておく。
Vol.03
- 循環器科
- 循環器科
●肥大型心筋症
肥大型心筋症は心筋そのもに異常を起こす、遺伝病で、収縮蛋白の生成異常であることが分かってきた。
正常なら右心室の自由壁が0.5で中核が1くらいのもが、中核が2〜3で自由壁が1とかになってしまう。
中核の肥厚で大動脈弁直下を狭くして、あたかも大動脈狭窄のようになる。流出路が狭くなるころで益々心筋に負担がかかる。
●疫学
猫で最も一般的な心疾患で、雄に多い。雄の場合は若齢でかつ重症化しやすい。これはテストステロンの影響。
ラットの実験から、雄猫の場合はもしかしたら肥大型心筋症を予防できるかもしれない。
特にアメリカンショートヘアー、メイクーンなど遺伝学的素因が大きいので注意。
●予後
心筋が厚いだけで症状がなければ長生きするが、うっ血性心不全、失神があったり特に血栓症があると非常に予後は悪い。
●原因
遺伝子の変異と成長ホルモン濃度の上昇。
Vol.04
- 循環器科
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●病態
●病理学的所見
●診断
逆流性や心基底部で駆出性雑音として聞こえる。ギャロップ・リズムが特徴。
レントゲンは、バレンタインハートと言われるが、早い段階であるとバレンタインハートでないこともあることに注意。その他肺水腫所見など。
心電図は左室高電位所見などで、心臓細動がある。
心拍数が230〜240bpm程度になると突然死などもあるので要注意。
Vol.05
- 循環器科
- 循環器科
超音波検査で左室壁が6mm以上あれば肥大している。(動画)
血液検査では血小板数を測定すると血栓の存在を疑える。
血圧測定では正常の範囲内におさまることが多い。高血圧は180mmHg以上だが日を改めて複数日測定して確定する。
●身体検査所見
開口呼吸、失神などに注目。猫では心臓病では咳はあまりみられない。
自宅で呼吸数を調べてもらうのがよい。
聴診では左側の心尖部で収縮期雑音が聞こえる。また僧帽弁逆流の駆出性雑音が混ざることがあり、心拍数が早くなるとギャロップとなる。
心音が減弱している場合は胸水を疑う。そして心音が減弱している猫の取扱いは要注意。診察中に突然死もありうる。
●レントゲン検査
心房が大きくなりバレンタインハートを示す。
●心電図
R波が高くなる(左室後電位)。異常Q波、ST低下
●超音波
超音波検査で左室壁(自由壁あるいは心室中隔壁)が6mm以上あれば肥大している。
大動脈狭窄症、甲状腺機能亢進症、全身性高血圧、リンパ腫、脱水(特に注意)を除外する。
Vol.06
- 循環器科
- 循環器科
●リンパ腫
超音波でリンパ腫の場合は黒く抜ける所見が心臓内に見られるので除外しやすい。
全身性高血圧の除外は血圧を測定するか眼底検査が必要になる。
●拡張相肥大型心筋症
内腔は広がり、収縮力は落ちる。一見すると拡張型心筋症のように見える。
●肥大型心筋症の診断ポイント
肥大様式の形態評価、左室流出路狭窄の評価、左房拡大の評価、合併症の評価(僧帽弁逆流、左房内血栓、動脈血栓栓塞症、心房細動、胸水の貯留)
猫の胸水は出来るだけ抜く。特に呼吸困難がある場合。超音波ガイド下で針をさす(心尖部と横隔膜の間に刺すとよい)
●肥大様式の形態評価
●左室流出路狭窄の評価
●左房拡大の評価
Vol.07
- 循環器科
- 循環器科
●左室拡張能の評価
パルスドップラー法による左室流入血流速波形の評価は猫では特に難しいので現実的ではない。特に心拍数が多い場合の評価は難しい。
●僧帽弁逆流
●収縮期前方運動の成因機序
●動脈血栓塞栓症(ATE)
肥大型心筋症の猫の45%で血液凝固更新が疑われる。
肥大型心筋症の33〜55%に認められる。
生存期間の平均は11.5ヶ月。発症部位は両後肢が一番多い。片側性に起こっている場合のほうが予後が良い。
脈拍の欠如、重度の疼痛、四肢末端の蒼白、四肢麻痺、直腸温の低下
ブトルファノール0.2mg/kgをIVして鎮痛する。
Vol.08
- 循環器科
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●肥大型心筋症治療の基本的な考え方
根本的には心拡張不全を改善させる。
●治療方針
急性期:利尿剤、血管拡張剤(注意が必要)、酸素室にて安静
急性期には強心薬も使いにくい。犬と同じような治療は危険である。第一選択は利尿剤と酸素室がファーストチョイス。
慢性期:利尿剤、β遮断薬(但し、左心室の内腔が狭くなりすぎている症例は禁忌)、血管拡張薬血栓塞栓症の合併:抗血小板薬、抗凝固薬、血栓溶解薬 ●利尿剤
フロセミド、スピロノラクトン ●ACE阻害剤
ベナザゼプリル、エナラプリル、アラセプリル ●βブロッカー
アテノロール、プロプラノロール、カルベジロール ●Caチャンネルブロッカー
ジルチアザム:心拍数を下げるため
アムロジピン:血圧を下げるため(特に使用に注意が必要)
Vol.09
- 循環器科
- 循環器科
●利尿剤
猫では利尿剤は感受性が高いので使い過ぎに注意する。
・フロセミド(0.5-3mg/kg,PO,BID-TID)
静脈内投与により低カリウム血症になりやすい。
トラセミドも同じだが、利尿が強いので血栓症を起している場合等特に注意。
・スピロノラクトン(0.5-3mg/kg,PO,BID)
利尿薬としての作用よりも抗動脈硬化作用、抗線維化作用、腎保護作用に期待。
血管拡張作用、抗アルドステロン作用、交感神経活性の抑制、心筋リモデリングおよび繊維化の予防、猫の肥大型心筋所にけるレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の活性化
・ベナゼプリル(0.25-0.5mg/kg ,PO,BID)
・エナラプリル(0.25-0.5mg/kg ,PO,BID)
・アラセプリル(1-3mg/kg ,PO,BID)
陰性変時作用に伴う拡張障害の改善、陰性変時作用による左室内圧較差の軽減、心筋酸素需要量の低下んいよる心筋虚血の改善
・アテノロール(6.25-12.5mg/kg ,PO,SID-BID)
・プロプラノロール(2.5-5.0mg/kg ,PO,BID-TID)
・カルベジロール(0.1-0.4mg/kg ,PO,BID))
Ca過負荷の改善による左室拡張障害の改善、心筋収縮力抑制作用による流出路圧較差や心筋虚血軽減効果
・ジルチアゼム(0.5-2.5mg/kg ,PO,TID)
・アムロジピン(0.15-0.3mg/kg ,PO,BID-TID)
Vol.10
- 循環器科
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●動脈血栓塞栓症の治療薬
抗血小板薬
・アスピリン(25mg/kg ,PO,q48-72h)*アスピリンは効かないことが立証済み
・ジピリダモール(4.0mg/kg ,PO,BID)
※抗血小板薬で血栓塞栓症が予防できると立証された薬は今のところ無い。理論上だけである。
・未分画ヘパリン(50-100 IU/kg ,SC,TID)
・低分子量ヘパリン(75-120 IU/kg/day ,IV)*最近はこちらが多く使用されるが厳密な投与量はまだ決っていない。
・ワルファリン(0.1-0.2mg/kg ,PO,SID)*ただし投与量を決めるのが非常に難しい。
・組換え型t-PA(27500 IU/kg,IV)*投与量ははっきりしていない。出来るだけ早期に投与したほうがよい。
ウロキナーゼは静注では効果はない。カテーテル等を用いる必要がある。
中隔心筋切除術、ペースマーカー埋め込み術、経皮的中隔心筋焼灼術 ●肥大型心筋症の鑑別
甲状腺機能亢進症、高血圧症、副腎皮質機能亢進症を鑑別する。
薬物療法で肥大型心筋症の症状が改善されるならそれは肥大型心筋症ではなく、甲状腺機能亢進症か高血圧症である可能性が高い。
Vol.11
- 循環器科
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●拡張型心筋症
以前は多かったが、最近はタウリン欠乏が原因であることが分かって減った。
●診断
●病態
●治療
肥大型心筋症に比べ、強心薬、ニトロ化合物などが多くなる。
・ピモベンダン(0.1-0.3mg/kg,PO,BID)
・硝酸磯ソルビド(1-3mg/kg,PO,BID)
拡張型心筋症は肥大型心筋症の成れの果て!
Vol.12
- 循環器科
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●質疑応答
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