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開催日: 2011年6月5日(日) |
整形外科学セミナー2011
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膝蓋骨脱臼 Vol.1
- 整形外科
- 整形外科
●イントロダクション
米国でも膝蓋骨脱臼は多い
●疫学
小型犬に多く、ほとんどのものが遺伝性、先天性(80%以上)で若い年齢で来院する。
小型犬、大型犬共に内方脱臼が多い。両側性であることが多い。
原因は遺伝的素因であることは示唆されるが遺伝子はわかっていない。
大腿四頭筋や股関節の異常、後肢の変形が関連していることが分かっている。
●膝蓋骨力学的考察
膝蓋骨が脱臼すると歩行機能、運動機能に異常が出るため、正常な膝蓋骨の機能を理解する必要がある。
膝関節が伸展するとき、膝蓋骨が必要である。膝蓋骨がうまく機能していないと膝をうまく伸ばせない。
膝蓋骨は体の中で最大の種子骨であり、滑車の働きをする。
膝蓋骨脱臼 Vol.2
- 整形外科
- 整形外科
●膝蓋骨が滑車上、可動域の戦域で安定して作用するには
膝蓋骨が滑車上、可動域の戦域で安定して作用するにはいくつかの条件が必要である。
大腿四頭筋の起始部、膝蓋骨、膝蓋靭帯、脛骨粗面がほぼ直線上に位置していることが重要である。
加えて滑車溝の適度な深度と、大腿膝蓋靭帯と関節包による膝蓋骨の安定化が補佐的に関与している。
滑車の形状及び膝蓋骨の周囲の軟部組織がしっかり機能していることが条件である。
●脱臼の機構
膝蓋骨の脱臼の機能についてはまだまだ仮説の域を出ていない。
一つの仮説は直線上の位置関係の異常(不整配置)
大腿四頭筋のそれぞれの筋肉のバランスが崩れることにより起こるという仮説もある。(長岡説)内側広筋引っ張りが強すぎるために膝蓋骨が脱臼する。
膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨が脱臼してるということだけでなく後肢全体に影響を与える。
膝蓋骨が伸展時にあるときに、膝蓋骨は滑車溝の最近位の浅い部分にスライドするため、より脱臼が起こりやすい。
膝蓋骨脱臼 Vol.3
- 整形外科
- 整形外科
●程度の評価と治療法の決定
グレードを4段階に分けるが、治療に関しての明確なガイドラインはまだない。
グレード1:無理やり手で押せば外れるが、何もしなければ膝蓋骨は外れない、骨格の異常も殆ど無い。跛行などの臨床症状を示すことはまずない。
グレード2:主観的で曖昧な定義付け。自発的に外れるが通常元に戻る。骨格の変形・異常は稀。臨床症状は様々。間欠的な跛行など。
グレード3:主観的で曖昧な定義付け。普通外れているが用手による整復が可能。何らかの骨格の変形・異常を伴う。例えば大腿骨の遠位が湾曲していたり、脛骨の近位が回転していたりする。臨床症状は様々。
グレード4:膝蓋骨が完全脱臼。強い力で押しても整復は不可能で、それに伴う骨格の変形・異常も重度である。膝関節が伸展できない。
(グレード5:骨格の異常や筋肉の拘縮が起こっていて、外科的整復などを行なっても機能を回復させることが難しい)
2〜4ヶ月齢の幼犬で重度の脱臼と骨格異常(グレード3〜4)を有する例では、骨格がまだ未発達で修正後の力学に適応できる能力を有する時期に、早期治療(矯正)。
若齢犬、または成犬の、グレード2の膝蓋骨脱臼症の場合は、脱臼による跛行の程度が増加する時期をとらえて適時に手術。
重度なものはなるべく早いうちに矯正してやることが大事である。
膝蓋骨脱臼 Vol.4
- 整形外科
- 整形外科
●内方脱臼の外科的治療法(治療の原理)
伸展機構の再配置(直線上に近い位置関係に整備)
a)内側開放術、b)脛骨粗面移植術、c)抗回転術など、その他に矯正的骨切り術や大腿直筋移行術などを行う人もいる。
滑車溝と膝蓋骨の適合性の向上(溝の深化)
膝蓋骨の安定性の向上(関節周囲軟部組織の締化)
a)余剰な外側関節包の除去および縫合
ほとんどの症例では内側開放術、脛骨粗面移植術、溝の深化、余剰な外側関節包の除去および縫合の4つを組み合わせる。軟部組織だけの矯正術や溝だけを深くするのは再脱臼の可能性が非常に高い。
膝蓋骨脱臼 Vol.5
- 整形外科
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●症例(2ヶ月齢グレード4)
内側広筋の解放とブロック法による溝の深化。2ヶ月齢では脛骨粗面の移植は行えないが、それを行わなくても矯正できる。
●症例
ウエッジ方のの変法(藤井法)
●症例
韓国から発表された変法
●症例
長岡法
●結論
病態を理解し、早期診断、早期治療を行う。その時には病態に基づいた治療法を用い、骨格の変形を予防する。
膝蓋骨脱臼 Vol.6
- 整形外科
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●質疑応答
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