Global FAST®︎ を受講したら、どのように活用できるの?
そんな疑問にお答えします!
実際にGlobal FAST®︎(AFAST®︎、TFAST®︎、Vet BLUE®︎)を取得したら、何ができるのか?疑問に思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
このページでは、Global FAST®︎を受講した後、どのように臨床現場で活かしているのか、実際の受講者の声も交えながら、ご紹介いたします!
まず、Global FAST®︎とは何か?
Global FAST®︎とは、AFAST®︎、TFAST®︎、Vet BLUE®︎を合わせた今までにない新しい超音波検査様式です!それぞれの腹部(AFAST®︎)・胸部(TFAST®︎)・肺野(Vet BLUE®︎)超音波検査で決められた画像を描出し、得られた所見をテンプレートに記録することで、今の患者の状態を迅速に&総合的に評価することができます。
決められた手順で行う検査様式なので、見落としや誤診が少なくなり、今何が必要で、何をすべきなのか?治療方針にたくさんのヒントを与えてくれます。



目次
1. 例えばAFAST®︎ で何ができるのか?


2. 犬のアナフィラキシーの診断にはハローサインが有用
3. 尿量測定、腹水・腹腔内出血の評価、輸血の判断
まだ尿道カテーテルで尿量測定しているの?
AFAST®︎を学べばカテーテル要らずで、尿量予測が可能です!
術後など尿量をモニターしたい時、現在尿道カテーテルを膀胱に設置して、測定を行っています。しかし、カテーテルが上手く入らなかったり、入院中に抜けてしまったり、血尿などのトラブルが起こったりして、なかなか難しいのが現状です。何か良い解決策はないでしょうか。
輸液量の評価や腎機能評価など、尿量モニターが必要になるケースは日々の臨床で多くみられますよね。ただ、膀胱にカテーテルを留置するのは、猫や雌犬ではなかなか難しい場合もあります。また、医原性の尿路損傷や感染の心配もあります。
AFAST®︎をきちんと学べば、膀胱ー結腸超音波画像の抽出を利用することで、犬猫の膀胱容量の推定が可能と報告されています。
どうやって腹水や腹腔内出血の評価を行う?
どうやってプローブを当てるのが一番正確な評価ができるの?
腹水や開腹手術後の出血のモニターをする際に、腹部全域にわたりエコーを当てて評価しています。できるだけ患者の負担を減らすためにも、より正確に迅速に評価ができるプローブを当てる位置はあるのでしょうか。また、腹腔内の遊離液を確認した場合、どのくらいの間隔でモニターするのが適当なのでしょうか。
腹腔内の遊離液のモニターでは、横隔膜ー肝臓像(DH)、脾ー腎臓像(SR)、膀胱ー結腸像(CC)、肝臓ー腎臓像(HR)の中でも、最も遊離液の検出感度が高い部位がわかっています。その部位にプローブを当てることでより正確に、そして迅速に評価をすることが可能です。また、腹腔内遊離液を確認した場合は、(その 患者の状態にもよりますが)状態が安定している場合は、頻繁に検査するよりもある一定の時間をおいて再検査することを推奨しています。AFAST®︎なら、より正確に、迅速に腹腔内遊離の検出が可能です。
交通事故で運ばれてきた犬。腹腔内出血がありそうだけど・・・
この後、輸血は必要? AFAST®︎を用いて、出血程度を評価してみよう!
交通事故や落下事故などで、腹腔内出血を疑う症例に遭遇します。大量出血はなさそうですが、「輸血が必要か?」「この後どうやって出血をモニターするのが良い?」といつも不安になります。エコーを使って、何か目安となる良い方法はありますか。
腹腔内出血の検出では、血液検査による貧血の評価や腹部のエコーが有用なのはよく知られていると思います。しかし、その程度や輸血の必要性の評価はなかなか難しいですよね。AFAST®︎で紹介されているabdominal fluid score(AFS)を用いて腹腔内出血の程度をスコアリングすることで、出血や貧血の程度の予測が可能と報告されています。 また、AFSを経時的に評価することで、その後の患者の状態を的確に判定できます。
4. FAST®︎ 取得医インタビュー
5. Global FAST®︎ 企画への想い
6. TFAST®︎とは?
胸部といえば、X線検査となりがちだけど…
もちろん、胸部の超音波検査で全てが分かるわけではありませんが、胸部に関して検査をするべき95%の症例で、第一選択すべきモダリティーは超音波検査だったという見解が、このプログラムの中できちんと検証されています。TFAST®(胸部)でできることとは?
- ・心膜浸出液(PCE)や少量の胸水の検出ができる
- ・肺や肝臓、胆嚢の異常や腹水も検出できる
- ・後大静脈と肝静脈を分類して血液量状態を知ることができる
- ・心エコーに関する情報(容積と収縮性の異常、左心および右心の問題、肺動脈と左室流出路の異常、
心臓関連性腫瘤)が得られる - ・気胸を検出することができ、ラングポイント(lungpoint)を見つけることで気胸の程度を評価し、
モニタリングツールとしても利用できる
胸部のエコーって難しいのでは?
一般的な心エコーが苦手という先生は意外と多いのではないかと思います。しかし、TFAST®なら「プローブを当てる位置はここ」「この所見があるなら、この様に」と、手順や評価方法が明確に定められているので非常に分かりやすく、実施しやすいのが特徴です。たとえ綺麗な画像を出せなくても、きちんと評価できるようになります!


7. TFAST®︎ を行えば、これがわかる!
TFAST®について、今回はどのように臨床現場で活用できるのかをご紹介します!
AFAST®・TFAST®はVet BLUE®と共に、Global FAST®の手順として順番に実施して、その動物がどの程度安定していて保定に耐えられるのかを判断したり、治療介入を優先すべきなのか判定する目的でも実施されます。
初期の段階で異常を見逃す可能性を低くすることや、動物の状態を知る上でも、AFAST®、TFAST®をぜひご活用ください!
立位の犬で実施する TFAST®


外傷患者に対するTFAST®の進め方:気胸やその他の胸部外傷を診断する


8. TFAST®︎の鍵 ゲーターサインを理解しよう!
ゲーターサインを理解して、胸部の異常をいち早く検出!
今回はTFAST® (胸部)の検査を進めていく上で重要なポイントの一つである“ゲーター・サイン”に焦点を当てました。聞き馴染みのない言葉ですが、このゲーター・サインから得られる情報は多岐にわたり、肋間腔の位置や肺表面などの重要な解剖学的情報に加え、胸部の状態をリアルタイムで評価することもできます。まずは、正確にゲーター・サインを描出することが TFAST® を学ぶ上での第一歩となりますので、ゲーター・サインを観察できるチェストチューブ位置(以下CTS)画像の描出方法から確認しましょう。
《CTS画像の描出方法》
・第8-9肋間(剣状突起すぐ上)
・プローブの向きは肋骨の長軸とスキャン断面に対して垂直に

ゲーターサインは2本の肋骨とそれらの肋間腔を表しています。
肋骨:黒い遠視野に伸びるアコースティックシャドウ
肋間腔:その間に移る白いライン
まるで水面からワニが頭を少しだけ出してこちらをじっと見つめているように見えることからゲーター(アリゲーター)・サインという呼称となりました。
さらにはTFAST® を受講すると、「片目のゲーター・サイン」という手法を学ぶことができます。セミナーでは、書籍だけでは学べない日々の臨床に活かせるちょっとしたテクニックが満載です!
※獣医放射線超音波学会誌(2014年)及び査読付文献にて掲載されている用語です。
ゲーター・サインから得られる情報は様々
- ・肋間腔の位置
- ・肋間腔から見た肺表面の位置を予測できる
- ・肺のスライディング
- ・ドライラング
- ・ウェットラング
- ・気胸
- ・肺挫傷
TFAST® 検査を進める上で重要なことは
①ゲーター・サインを正確に描出する
②その正常な解剖学的背景を理解する
これらを達成することで、胸部の異常をいち早く検出し、敏感に対応することができます!
例えば、呼吸器疾患などで動物の移動や保定が難しい場合に、検査ができないと諦める前に、TFAST® で少しでも多くの情報を集めて、素早い治療へ繋げましょう!
9. FASTを習慣化して、Satisfaction of search errorをなくそう!
Satisfaction of search errorとは
サティスファクションオブサーチエラー(SOS error)とは、最初に 1 つの異常を検出すると調査を止めてしまい、それ以降の問題を確認しないこと、つまり最初に検出した異常で満足し、早まった結論を出してしまうことです。
AFAST® TFAST® を実施して、SOS errorを防げた!という受講者からの声
最近食欲の落ちたシニア猫が来院。
血液検査では軽度の腎数値上昇を認め、X線検査では異常なし。
AFAST®では軽度の左腎萎縮があったので、慢性腎不全の治療をして帰そうと思っていました。
しかし念の為、TFAST®を実施したところ、軽度の胸水と心嚢水が見つかりました。
胸部X線ではわからない程度のものだったので、TFAST®をしていなければ見逃していたと思います。
8歳のゴールデン・レトリーバーが元気消失と食欲低下を主訴に来院。
身体検査で腰部にホットスポットがあったので、原因はこれかなと思っていました。
血液検査では大きな問題はなく、AFAST®とTFAST®を実施しました。
腹部臓器には異常はありませんでしたが、心嚢水の貯留を認めました。
その後、二次診療施設に紹介し“血管肉腫”の診断が下りました。
早期の診断により、最期の有意義な時間を過ごすお手伝いができました。
SOS errorを防ぐには、先入観や思い込み、思い違いを捨てて、何か見落としていないか?常に自分に問いただす、という姿勢が大切です。こういった見逃しを防ぐために、ぜひAFAST®︎、TFAST®︎をご活用ください!
10. 獣医師なら誰でもできる TFAST®︎の心エコー図検査
できない・見ない・やらないをなくす
心エコー図検査と聞くと、「綿密に行わなければいけない!」と思ってしまいませんか?
TFAST® 心エコー図検査は、そんな先入観を覆す、誰もが習得できるように工夫された新しいスタイルの超音波検査方式です!患者が今どのような対処を必要としているのかを把握することはもちろん、治療対象となる動物を見逃さないことや、適切なタイミングで専門医に紹介するという決断にも大変役立ちます。
なぜ誰もが習得できるのか?今回はその理由に焦点を当てて解説していきます。
TFAST® 心エコー図検査が実施しやすい理由!
- ・プローブはマイクロコンベックスを使用!
- ・腹部 Preset モードで見る
- ・毛刈りをしなくて良い
- ・動物は右ラテラルでも起立位でも大丈夫
- ・保定は最小限、その場ですぐに実施できる!
- ・継続的なモニターが容易
描出方法がわかりやすい!
右側短軸画像であれば、プローブは4時の方向に当てる!(起立位)
まずプローブを当ててみて、自分がどのレベルを見ているのか、この図を参考にチェック!


目測法も大いに活用!
例えばLA/Ao比であれば、左房が大動脈径の2倍を超えていないかなどを目測でチェック!
大動脈径が左房の中にいくつ入るか?描いてみると、よりイメージしやすい!
(LA:左房、Ao:大動脈)

X線検査では見逃しがちな心臓の所見は多数!
- ・心膜浸出液
- ・左房破裂
- ・拡張型心筋症
- ・肺高血圧症
- ・心臓内腫瘤
- ・犬糸状虫
- ・猫の左房内モヤモヤエコー
TFAST®︎心エコー図検査を組み合わせて補足することで、見逃しや異常所見の検出の遅れを最小限にできます!
TFAST®︎をしなければ得られなかった所見は、患者の治療選択にたくさんのヒントを与えてくれます!
11. 確証バイアス・エラーの落とし穴 AFAST®︎ TFAST®︎の 実践で最小限に!
確証バイアス・エラーとは?
確証バイアスとは、獣医療だけに限らず、様々な分野でみられるバイアスの一つで、自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向のことです。例えば、選択した部位だけをスキャンしたり、自分の仮説にとって不都合なデータを無視してしまい、その結果、重要な所見を見逃し誤診に繋がってしまうことです。
コースの1例から考える命運を分ける選択
ドーベルマン・ピンシャーが、急性の脱力と虚脱で来院
”胆嚢壁浮腫”が検出
この時、横隔膜ー肝臓画像では心臓の陰影は確認できなかった
エピネフリンと大量の晶質液を静脈内投与!?
このままでは重大な何かを見逃してしまっているかも!?
右側TFAST®︎心周囲位置画像の短軸マッシュルーム画像にて”重度の左室拡張”を確認
また収縮性の低下も認める
拡張型心筋症の疑い
同症例のTFAST®︎短軸マッシュルーム画像と胸部X線検査所見

左室内径は5cm以上と、重度に拡張しているのがわかる

心臓の高さが大きいが、拡張型心筋症かどうかはわからない
このように、AFAST®︎ TFAST®︎を組み合わせることで、証拠に基づいた正しい情報を得ることができ、確証バイアス・エラーの防止に役立ちます!
またAFAST®︎ TFAST®︎に加えてVet BLUE®︎を取り入れたGlobal FAST®︎を実施すると、更なる画像解釈のエラーの防止に繋がります。
日々の診療にAFAST®︎ TFAST®︎を取り入れて、最善の治療選択を見極める選択肢を広げませんか?
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